暁 〜小説投稿サイト〜
アブソリュート・ブレース――絶対双剣
episodeT 始まりの日?
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しいこと考えたくないが自分の意思でストッパーを掛けておくからトイレに行くまでの道中では安全が保障されている訳でもある。つまり心臓が鼓動を鳴らすのと同様にトレイに行きたくなるという衝動そのものが胃や腸などの消化器官が無意識化に行っている物だとするならば、逆に防衛線を張るための意思が欠如した状態は非常に危険と言わざるを得ないのでは――

「――ヤバい。早く飯食うぞ」

 ベッドの上で倒れ込んだ状態でカタストロフを引き起こす自身の姿を想像してしまった俺は背筋を震わせ歩幅を広げた。片開きのドアを開け、ダイニングへ。
 2DKのこの家は一人暮らしにはいささか……どころか無駄に広い。キッチンが必須なのは当然だとして、男の一人暮らしなら飯ぐらい自分の部屋で十分だ。二部屋を豪華に寝室と勉強部屋に分けているが、むしろ移動の手間があって面倒だと感じるほど。中学校まで狭い部屋で暮らしていたせいで貧乏性が強いのだろう。
 ならこんな場所に住むなよ、と言われそうだが、誤解の無いように説明しておくと俺は一人暮らしを始めるに至る時、1Kの物件でいいと伝えたのだ。それがどう解釈されたのか、よりにもよって高級住宅のマンションの一室になったのだから当時の俺が部屋を直接訪れた際にあんぐり口を開けたのは言うまでもない。

「まあ、気持ちがわからない訳でもないけどな……」

 俺は苦笑し、これまたこの家に相応しく、俺にはとても不釣り合いな高級冷蔵庫を開ける。狭い場所に置けて中には沢山の食材が入る、なんてありがちな謳い文句で宣伝されていた品らしいが、中にレトルト食品や冷凍食品、料理の経験が浅い男子が適当に料理するために買い揃えた少量の野菜や肉しか保管されていない状況は随分な宝の持ち腐れに感じる。最大容量の半分を超えた状況を拝んだことは一度もない。

 一万人に選ばれためでたい日だ。久々に手料理するか。
 本当は他の人間と同じように店に徹夜で並んで苦労したのではなく、あの人のコネで手に入れただけなのだがそんな真実はひねり潰し、俺は適当に食材を引っ張り出す。とはいえ、俺に作れる料理などカレーやシチューなどの調味料パッケージに作り方が記載されているものか、シンプル・イズ・ベストな野菜炒めやチャーハン程度。男の一人暮らしに大活躍の調味料が切れているため、必然的にメニューは後者二点に決定。

「よっしゃ、やりますか」

 しばし、空しい男一人暮らしの家に呑気な鼻歌と油のはねる音が響いた。



「明日提出の宿題オッケー。友人との約束事も無し。夕飯の用意は適当に冷凍食品で済ますから問題なし。――トイレも行った。うん、完璧だ」

 十分で調理、十分で完食。三十分かけて余念なくトイレやらの準備を終えた俺は寝室のベッド前に立っていた。指折り数えて懸念事項をクリアしてからベッ
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