第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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大地を無数の足が駆け地面を穿ち震わす。猛る戦意を咆哮に変えて戦士達が人中に吶喊する。馬を駆るその者たちは手に持った鉄の武器で、敵目掛けて斬り付ける。苦痛の叫びと断末魔をあげさせられる者達は、黄色の頭巾をはためかせて戦慄し、逃げ出す始末であった。
自らの持つ得物で反撃する暇を与えられずに殺される者、暇をもって武器を振り回す者、それでもなお殺される者。無数の人馬がひしめく戦場にて、仁ノ助もまた目を戦意に滾らせて獲物の頸に刃を振りぬく。妖刀でプリンを斬るが如く、男の頸が濃厚な鉄の臭いを放ちながら刎ねられた。返す刀で進行方向に居る敵、そして振りぬいた先に居る敵を同時に裂く。頸を斬られた男は喉奥深くから赤黒い肉を露出させて勢い良く噴出す血を抑えようとするも、次いで腹を吉野にしたたかに蹴られて後ろのめりに倒れた。障害物を一つ轢いたところで馬の足は緩むことは無い。主の手綱に導かれて走る姿は颯爽としたものだ。ばたばたと靡いている彼の外套は返り血で紅く染まっていた。
(本当に呆気ないな。さすがは荀文若だ)
官軍によって、否、我が猫耳軍師が考案した機動力を生かした撹乱を基にした戦術により、黄巾賊は散々に蹴散らされていた。小が大を駆逐する戦果が十分に見せ付けている。
曹操の寵愛を受けんがために奮闘する軍師のためにも、自分はさらに力を振るうとしよう、そう決めた仁ノ助は、自ら率いる騎馬隊により敵中を縦横に駆け巡っている。戦線が敗れ続けになっている賊軍は、唐突に迫りくる騎馬の群れを避けようとするもそうする前に背中を斬り付けられていた。
仁ノ助のほかにも、官軍に籍を置いている孫堅が同じく騎馬で敵中奥深くまで侵攻している。既に両翼より破られていた賊軍は戦意を既に放棄しているようで、中には仲間を見捨てて投降する者が、早くも出てきていた。
(不甲斐なさすぎる。これで天下をどうこうできると本気で思っていたのかよ?無害な人達に暴力を振るってまで?なんとも、御粗末な奴等だなぁ・・・)
呆気ない程に簡単に事が運んでしまって気が緩みかけるも、刃を閃かすために余力は惜しまない。クレイモアを振るう度に敵中から血飛沫が飛び、刃にやつれた脂肪や筋肉の繊維が付着していく。仁ノ助はそれを振り払いながら次の獲物に向かっていき、刃を振るった。思わず濃厚な死臭にくらくらとしてしまう。恐怖に駆られている民草を斬る事に喜びは感じずともばったばったとそれらをなぎ倒す、えもいわれぬ爽快感が得られるのが一入であった。
その快感によって脳が犯される前に、副官の曹洪が蛮刀を振るいながら馬を寄せて告げてきた。
「厄介な事になりました。孫堅殿が敵中にて孤立した模様です!」
「はぁ!?おいおい、何やってんだよあの人は・・・!」
思わず舌打ちが漏れる。猪突猛進は孫家代々に伝わる血の
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