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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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「止めなさい、まだ私が喋っているのよ?・・・兎も角、彼らを救出して、そして戦線に復帰したと。副将共々、一時的に兵の指揮を放置したのには、そういう理由が絡んでいたから。そういう事なのね?」
「はっ。その通りであります」

 ふむ、と曹操は腕を組んで顎を一撫でする。そして氷を彷彿とさせる表情で呟く。

「これは大きな貸よ、孫堅。ええ。いつか必ず精算してもらうから・・・」

 傍に立っていた荀イクがぞくりとしたように肩を震わせ、恍惚とした瞳を主に向けた。相も変わらぬ忠誠ぶりに仁ノ助は呆れかけてしまうが、自分とてあの声色にぞくりとしたものを感じてしまっており、人の事はいえないなと自省するに留まった。
 曹操は肩にかかっていた螺旋状の髪を払うと、仁ノ助に怜悧な眼光を注いだ。今度こそ仁ノ助は背筋を硬直させてしまう。

「将軍としての地位を自覚しなさい、仁ノ助。あなたの自己犠牲心は何にも代えられぬ貴いものだけど、あなたに付き従う兵達を放置してまでそれを優先するような真似はあってはならない。己のなすべき事を弁えぬ者は将足り得ない。今後は状況をよく判断してから行動なさい」
「・・・畏まりました」
「ふん、いい気味だ。華琳様に『あんな言葉』を言うから厳しく咎められるんだ」「うぐっ・・・それは、深く反省しております」

 夏候惇の指摘は、会戦前に仁ノ助が口走ってしまった迂闊すぎる言葉の事を指しているのだろう。内面に何が込められたかはどうであれ、あれは客観視すればただの愛の告白と同じ文面であった。結局その日の彼はうら若き女性陣らの嫉妬の対象となってしまい、鮮烈なしごきの嵐に晒されたのが皆の記憶に新しい所であり、荀イクがいたく満足する所であった。
 しかし当時を振り返るに、やはりやり過ぎたという面を感じていたのか、毒舌軍師は珍しく罰の悪そうに口をへの字にしていた。主に、行った制裁について反省しているようだ。そして意を決して口を開かんとした瞬間、夏候惇に先を越されてしまい、また閉口する。

「まぁ、流石に私達もいささか状に走り過ぎた面が否めない。お前と同じように、将としての自覚を失っていたやもしれん。仁ノ助、この前は済まなかった」
「姉者だけを謝らせるわけにはいかない。如何にしごきに直向きになる姉者が可愛かったとはいえ、泥を食ってまでそれに付き合わされるお前を静観していたのは間違いだった。あの時は済まなかった」
「い、いえ。御蔭でまた強くなれたわけですし、それにいくらなんでもアレは過ぎた言葉でした。もう大丈夫ですから、本当に」
「そうか・・・見た目の優顔に似合わず、中々男前だな。気に入った。今更といってはなんだが、私の真名を預けよう。春蘭と呼ぶがいい。そして、妹の真名は秋蘭だ」
「あ、あの、勝手に真名を預けられちゃったんですけど」
「まぁ
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