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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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いなる興味を抱いてしまう。普段は抑えている分こうやって刺激されると、理性の鎖が外れてしまうのである。多種多様で耽美なる光景に、期待はで胸がわくわくとしてしまった。
 而して彼の想像は、それを遮るような誰かの悲鳴によって中断されてしまった。目前に投げかけられた槍の穂先を無意識に掴むと、彼はそれを賊中へ投げ返し、惹起される人の死を見返ることなく前方の活路へと進んでいった。今、彼の脳裏を占めているのはこの戦場からの生還と新たな武勇、そして孫堅との耽美な情事であった。
 彼は疾風の如き速さを吉野に要求する。心のどこかで錘琳に対して心苦しいものを抱いていたが、それに忠実になるためには後方から与えられる雌の臭いはあまりにも強烈で、たとえ拒否しても向こうから迫ってくるだろうと予感めいたものすら感じてしまう。どうしようもない事に、若い雄のダメダメで不誠実な本能は自分勝手に妄想をしてしまう性質があった。特にそれは童貞をこじらせるとそのような傾向にあり、仁ノ助はまさにそのストレートゾーンのど真ん中を行っていた。
 
 戦場の混乱は徐々に治まっていき、黄巾賊が蜂の巣を突いたように逃げ出すのには、それほど時間が掛からなかった。



ーーーその後、日暮れにてーーー


 
 塵芥のごとく矮小な存在でありながら、しかし積み重なれば泰山をも慣らしてしまうであろう、漢室の雑兵らが大地を忙しなく駆けていた。夕陽の赤に照らされるもはや息もできなくなった夥しい賊兵を見れば、彼らがしている事に説明を求める必要はない。まだ自分達に逆らう者がいないか、雑兵らは隊長の言葉に耳を傾けて、重くなる足を必死に動かしていき、獲物をみつけては刃を向けていった。
 所変わって官軍の本陣では、俄かに安堵の空気が生まれていた。激しい一線を乗り越えて満身創痍となった兵等の出す、弛んだ雰囲気のためであった。本来なら怠慢であるとして追及を受けるべきであるが、それを(ただ)す将軍らは別の場所にいた。戦場の香しい鉄の臭いがじっとりと沁みこんだ身体のまま、仁ノ助と、曹操配下の歴戦の諸将らは堂々たる態度で主に面していた。本陣の入口近くに『曹』の牙門旗が高々と、そして泰然と靡くのを見遣りながら、曹操は鋭い眼差しを皆に向けた。常の凛とした声色に、大労をねぎらうかの如き優しきものが混じっていたのに気付いて、仁ノ助は報われる思いを抱いた。

「皆、よくぞ戻った。あなたたちが知りたいであろう、戦の戦果を伝えるわ。この戦いは我等の完全な勝利となった。賊たちは次々に降伏の意を示してきている。明日にはその正確な数が上がってくるでしょう。おそらく数千、あるいは一万を越える敗者によって大地が埋め尽くされるでしょうね。
 この勝利の切欠となったのは、二つの大きな動きがあったからよ。一つは、戦場を蹂躙した猛者がいたこと。
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