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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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をいとも容易く捌いていた。恐れ戦く賊共であるが、数に任せて攻め続ける姿は馬鹿の一つ覚えといったところだろう。剣や槍で立ち向かう者は孫堅と彼女の娘であろう女性によって地獄に送り返され、弓矢を射掛けようとする者はすぐさま妖艶な射手の反撃にあい、逆に仕留められている。
 やっぱり手を貸さなくても大丈夫じゃないのか、と一瞬思ったが、考え直した仁ノ助は吉野にさらに足を速めるよう鞭を入れる。曹洪の馬をあっさりと追い抜かした。

「ちょ、ちょっと!案内は私がすると言った筈です!聞いているんですか、仁ノ助さん!あんた馬鹿じゃないのか!!」

 曹洪の抗議は後で聴くこととしよう。
 クレイモアを握る力を入れ直すと、曹洪が狩る筈であった賊の頭を横殴りで両断する。排泄物のような色をした血の雨を潜り抜けと、進行方向横から、槍が顔目掛けて差し込まれてきた。

「ちっ!邪魔だなっ・・・」

 上半身を屈して避けるとお返しとばかりに剣をそちら目掛けて返す。間一髪でそれを避けた賊であったが、頭ではなく胸を深く斬られてしまっていた。戦場では良くある運の無さを自らの体で覚えることになったその者は、悲鳴を漏らす前に曹洪の蛮刀により今度こそ頭を割られてしまう。
 吉野は仁ノ助を乗せて賊の間を、まるで矢のように駆けていく。時折、凶刃によって倒された相手を湧き出した蛆諸共ふみ潰して、ぶちぶちと音を立てているのが分かる。さすがに少し気分が悪くなる音であった。人間の肉体を裂くことは慣れても、その後に自然発生する蛆達の饗宴は見るに耐えない。地獄を生きるには卓越した武技以上に地獄をなんとも思わぬ精神が必要である。あるいはその悲惨な光景を茶化すかのような余裕も必要であると感じた。
 顔を横一文字になで斬りにされて絶叫を上げる賊を無視すると、ようやく彼は件の騒がせ者共の下へと駆けつけた。

「猪突猛進にも程があるぞ!孫堅殿!もう少し自重してくれないとこっちが困る!」

 三国志を代表する豪傑相手に『自重しろ』と言えるのは、ある意味貴重な体験ともいえた。だが仕方がない。江東の猛虎は本当に猪武者であったのだから。
 軽く業物を振るって滴る血脂を払うと、孫堅はにこやかに答える。

「お前が楽をできるよう敵の注意を惹きつけていたのだ。やつら、女の臭いには敏感だからな。蟻のように群がってきおった。その分多くを倒す事もできたが、少々私達は魅力的すぎたらしい。
 すまないな、逆に迷惑をかけてしまった。これも一つの愛という奴だ。私からお前に対してのな」
「こんな形で返されるほど愛をもらっても、どう返したらいいか分からないんだよ!」

 仁ノ助は救出を邪魔しようとする無粋な輩に剣を突き刺して、すかすかの骨を巻き込まんと一気に振り抜いた。続いてその後ろから迫ってくる新たな敵を狙わんとした
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