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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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人や二人、お前くらいなら簡単に手に入るだろう?お前はそれで我慢せよ」
「絶対にありえないわ。江東の虎は決して狙った獲物を逃さないの」
「はっ!私に比べたらお前など赤子もいい所だ!」

 修羅場なのに母娘で男を取り合うのか。相変わらずに自らのペースを崩さない二人に、黄蓋はやれやれと頭を振る。口喧嘩をしながらも互いに出来た小さな隙を埋めるように剣を振るう姿は、母のそれは一瞬の油断もない老虎であり、娘のそれは獲物を全て喰らい尽くす若き虎のものであった。
 やはり、と黄蓋は思う。母親も若き頃からその才覚を政戦双方に渡って磨いてきた。彼女が辿ってきた道を、孫策は着実になぞってきている。このまま順当に成長すれば、孫家の誇りと未来を預けても憂いはないだろう。黄蓋を疲弊を全く見せずにただ弓を射掛けて、百発百中の腕を披露する。彼女の武人としての才能も、これからの孫家の成長の一助となる事は間違いが無かった。
 
「兎も角、口喧嘩はほどほどにしていただきたい!まずは目の前の飢えた獣を躾けねばならぬ!」
「ふむ、祭の言葉はもっともだ。馬鹿娘、まさかとは思わんがこんな所で死んではならんぞ?まだまだ教え足らぬ事もあるからな!」
「喧しいわね!そんなに怒鳴らくても聞こえるわよ!帰ったら六韜(りくとう)の読み合せでも何でも付き合ってあげるから!」

 女達はますますと奮起して、賊たちの体がさらに積み上がっていく。しかして賊らは自分達の兵数だけは自信があるのか攻めの手を緩めようともしなかった。やがて晒される死体によって平地がどんどんと埋まっていき、足場に難儀しかけていた、まさにその時であった。
 状況を打ち払うかのように馬の駆け足が聞こえてきた。その方向からは悲鳴と剣戟、僅かに聞こえるのは肉を切り裂く音であろう、が耳に入ってくる。十中八九、孤立した自分達を救援しにきた官軍であろう。
 また一人の心の臓を射掛けると、黄蓋はそちらを見遣った。彼女の鷹のような視力が、二人の青年の姿を捉えた。



ーーー仁ノ助の視点にてーーー



「なぁ、救援にこなくても大丈夫だったんじゃないか!?」
「何を言っているんです!これも兵勝の術を確たるものにするためです!我慢してください!」
「とはいってもな・・・」

 仁ノ助は呆れるような、恐れるような面持ちでたった三人の味方を見詰めていた。遠くからでも幾重にも積まれた死体が見えてしまう。あの恐ろしき戦況を作り出した彼女らは全員が全員、戦修羅となるに足りる武技を持っている。ともすれば、夏候惇将軍でさえも本気で苦戦する相手なのかもしれない。
 その想像に末恐ろしくなりながらも、仁ノ助らは遂に彼女らをはっきりと視界に捉えた。周りには幾重にも渡って賊の死体が地に伏せており、それらに囲まれた場所で、彼女らが迫りくる賊達
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