第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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を理解すると、どうする事もできずに目を開き、顔を羞恥の赤に染め上げた。また、その手の感情が男性に対する免疫の無さを優越する事に、彼女自身戸惑いを隠せない様子でもあった。
「一回やってみたかったんだよな。他人から借りた猫がどこまで大人しいのか、それを確かめるっていう」
「・・・・・・へ・・・え・・・?」
「おいおい。本当に猫みたいな反応をしてるじゃないか、桂花。案外可愛いもんだな。それに、なんかいい香りがする。香水とか使っているのか?」
「え・・・?ま、まぁ・・・薬草を擦ったのを少し・・・」
「綺麗になるための努力を怠らず、さりとて軍師としての務めも怠らない、か。立派な心構えだ。尊敬するよ」
まるで開き直ったかのように仁ノ助は毒舌軍師を胸中に抱き、渾身の思いで愛でていく。香水云々は根拠のない出鱈目なものであったが、それに類するものを使っているという問いには内心驚かされていた。古来より女性の美に対する追及意思は研磨されていたのだと、彼は心から実感し、それを間近で堪能する。一輪の花の甘い蜜のような香りで、あたかも風呂上がりの石鹸のようでもある不思議なものだ。眼つきだけが鋭い童顔の彼女はそれによって清楚な色気を帯びているようにも感じて、ただ赤面してして反応に窮する態度が、中々に愛おしさを誘う。
時間が許す限りそれを愉しんでいたい所であったが、仁ノ助は殺意染みたものが周囲から向けられるのに苦笑を漏らし、名残惜しげに荀イクを離す。顔を林檎のようにした彼女は潤んだ瞳をしながら後退りして、恐怖から遠ざかる子供の如く曹操の背後に隠れた。彼女を庇う恰好で曹操は冷笑を浮かべ、仁ノ助を睨む。男の顔に出ている無駄に堂々とした苦笑に、彼女はいたく気分を害したようであった。
「・・・・・・皆の者」
『はっ』
「この不埒者を思いっっきり懲らしめてやりなさい!」
『はっっ!!』
「まぁ、そうなるよね。大体結果は分かってたんだけど」
「分かってたんならやるな!鈍感野郎!」
乙女の複雑模様な心をぶつけるように、錘琳が沈黙の壁を突き破り、仁ノ助に全力の拳骨を叩き付けた。最近の鍛錬で一層力を付けたのか、ごきりという音を彼の頭頂部に鳴らしてそれ相応の痛みを与えてくる。が、仁ノ助にとってはあまり気になる程のものではなく、反撃とばかりに顔をにたりとさせて彼女の美顔を悔しげなものとさせた。
だが、次に聞こえたポキポキという骨の音には流石に彼も顔を引き攣らせた。膂力にものを言わせる代表、夏候惇将軍が立腹した顔つきで詰め寄り、物を言わせぬ圧倒的な迫力により肥大化したように見える豪腕をぽきぽきと鳴らしているのだ。真名を預けたゆえに更に遠慮が無くなったのか、あれはどう見ても鍛錬に巻き込む顔というより、処刑を下す尋問官の如き顔であった。謝罪の言葉がそのまま彼女の本
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