第三章:蒼天は黄巾を平らげること その3
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、いいのではないか?私と姉者は一心同体。姉者の意思を私は尊重するよ。それに、お前に真名を預けたいというのは、私とて同じ思いだ。これから宜しく頼むぞ」
そういって笑みを向けてくる姉妹に、仁ノ助は苦笑でもって返礼とした。彼女等の素直な態度に怒る気を失くしたのである。男性陣については騒動の前後に隔てなく、平等に接してきたため特に思う所は無く、詩花についてはただヘソを曲げただけだと解釈したため、これまでの親密さからいって特別に謝罪を求めなかった。
但しあの軍師については例外である。じろりと目を向けると、軍師は気まずげにびくりと肩を震わせた。そしてしおらしさを演出するようにもじもじとしながら、言わんとする。
「・・・ねぇ、変態精液魔人・・・あのーーー」
「お前だけはちゃんと謝れよ!?本気で命の危険を感じるくらいの行動をやったのはお前だけなんだからなッッ!!」
「な、何よ・・・落とし穴とか、最近見つかったばかりの薬の実験に付き合わせただけじゃない!」
「へぇっ!?竹槍を針山のように並べた落とし穴とか!変な薬を飲まされて、風景が七色に変化して変な動物が跋扈しているように見えたりとか!恐ろしすぎて涙が出たわ!年甲斐もなく泣きかけたのって数年ぶりだよ!」
「あんた、前は何で泣いたのよ?」「目覚めたら口元にゴキブリがいた時」「ぷっ!・・・いや、泣くわよね、それ」
「桂花・・・あなた一体何をやっているのよ?」「ち、違うんです!ただ、あいつに反省の意を抱かせるために・・・」
「何が反省だ。お前がやったのは明らかに故意の殺人未遂でしょうが!正当防衛で御仕置されなかっただけ幸運に思えよ?・・・ほら、さっさと謝れよ。一言でいいからさ」
荀イクは悔しげにぎちりと歯を鳴らす。そして周囲に目を向けて、自分に注がれる『早くしろ』という催促の瞳に気付くと、遂に観念して素直に頭を垂れた。フードについた猫耳が表裏の無いか弱さを示すようにしゅんとしている。
「・・・ご、ごめんなさい。全面的に私が悪かったわ・・・」
「・・・・・・ダメだ。まだ許さない」
「な、なんでよ!?ちゃんと謝ったじゃーーー」
「御仕置としてこうしてやる」「ひっ!?」
仁ノ助は戦場の幽鬼のように素早く荀イクに詰め寄る。それは並み居る歴戦の勇士の目を一瞬惑わす程のもので、普段は最前線に立っていない軍師が反応できるものではなかった。いきなり眼前に迫った手に荀イクは怯え、身体を引き寄せられるとぎゅっと目を瞑った。しかし予想していた痛烈の一撃は全く訪れず、代わりに襲ってきたのは男性らしい厚い胸板の温かみと、頭頂部をなでなでとする手の感触であった。荀イクは彼に抱き寄せられ、抱擁された後、猫のように撫でられているのである。
彼女等の主を含め、皆が事の顛末に瞠目する。荀イクは何が起きたか
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