第15話「京都―決戦@」
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れでも無言だった。だが、やがてコクンと頷き、目に溜まっていた涙を拭いて彼女の顔を見上げた。
「そう、ですよね! タケルさんは本当に用事があるんですよね!」
「うん、どうしても信じられないなら――」
続きを言おうとして、だが、後半の言葉はネギによって遮られて紡がれることはなかった。
「――いえ、信じます!」
「……え?」
「僕はタケルさんに色々親切にしてもらっていることを忘れてました。でも、アスナさんのおかげで全部思い出しました」
アスナの顔を見上げる。確かに、そこに暗さの影は一切残っていなかった。
「だからもう大丈夫です!」
「……そっ」
――それならいいわ。
ホッとお互いに笑みを浮かべあう。二人に流れる、どことなく良い雰囲気。そして、空気を読んで黙っていた一匹が呟いた。
「アニキ、姐さん。もう駅についてるぜ」
「ええ!?」
「ちょ、それ先に言ってよ!」
騒がしくも電車を降りる2人と1匹。
ネギの顔は、まるで何かが吹っ切れたように明るかった。
光すらうっすらとしか差し込まない深奥の森。
ただ、コントローラーの赤い点がさす位置だけを目指して走っていた。
今回の星人は赤点が1つ。それはコントローラーに他の敵が指し示されていないだけかもしれないが、おそらく違う。
――この感じは相当強敵かもしれ……いや、弱い? ……何だ、この感覚は?
かつて、強敵と対峙した時のような。それでいてまるで1点しかない星人のような。そんなわけの分からない感覚。
――いや。
この奇妙な感覚は捨てる。
大事なのは目の前の敵という事実だ。
既に戦闘態勢。
色の抜け落ちた表情に、油断なく周囲を観察しながら突き進む。
そして
――いた。
距離にして、まだ数百Mはあるはずだが、森を抜け、光差す平野に座し、揺らぐことのない視線でタケルを射抜いていた。
――……見つかったか。
本来ならある程度近づいた後、ばれないように潜伏、接敵、奇襲。それがタケルの常だが、隠れる前に見つけられてしまってはどうしようもない。
素直に星人の目の前に到着する。
タケルの到着を待っていたかのように、彼はすっくと立ち上がる。
一つの頭に一つの胴体。2本腕で2足歩行。容姿は歳の頃50〜60歳程。ひげに蓄えられて立派な白いひげが特徴的な、完全に人間の姿。
「……」
昇った太陽を背に大きな剣を地面に刺し、剣士たる堂々としたその姿に、不覚にも目を奪われてしまった。
細く伸ばした鋼線で輪を作り、それらを互いに連結して服の形に仕立てた、いわゆるチェーンメイル―日本でいう鎖帷子に近い―
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