第四話 〜アスナが勧誘されるお話 後編【暁 Ver】
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れた。あたしの『感』は先程から五月蠅いくらいに警鐘を鳴らしている。この感覚は懐かしく、そしてあまり思い出したくない類いのものだった。だって、これが鳴る度に『アレ』がトラブルを運んできた挙げ句に、あたし達へ投げてくるのだ。そして、半ば予想通りの娘が────
──── 屋根から落ちてきた。
庭に大の字になってぴくりとも動かない彼女は。電池が切れたと思っていたのに、突然動き出したおもちゃのように上半身を起こした。
「……びっくりな」
「あんたが吃驚だ」
リビングの窓から顔を出したあたし達と、彼女──── アスナは、こうして何年かぶりの再会を果たしたのだ。
はやては屋根から落ちてきた彼女──── 桐生アスナを見つめていた。資料で見た画像データよりも少しだけ大人びて見える。ティアナやスバルも美少女だと十分言えるが、彼女も負けてはいない。太陽のような暖かな色をした髪を背中に流し、ビスクドールのような白い肌。左右の色が違う瞳と、あまり変わらない表情が却って神秘的な雰囲気を醸し出していた。
だが、自分が持参したお土産のプリンを食べる姿は小動物か、幼い子供のようにも見えた。目の前にいる彼女が、情け容赦なく魔導師達を叩き落としていた人物とはどうしても思えなかった。それも──── 後に行う模擬戦に於て証明されることになる。
「……ほっぺにカラメルついとるで」
アスナは唐突に良く知らない女性に話しかけられ驚いたが、少し考えた後、ぺろりと舌を出し舐めとろうとする。
「反対側や。舌じゃ届かへんやろ。ほら、じっとしとき」
はやては持っていたハンカチで、アスナの頬を思いの外慣れた手つきで拭く。アスナはおとなしくされるがままになっていた。その姿は幼い妹の世話をする姉のようだった。
「さて、アスナ? 八神さんのお話はわかりましたか?」
アスナがお土産のプリンを遠慮なく二つ平らげたのを見計らって桐生が切り出した。アスナは瞳孔が開き気味の瞳ではやてを見つめていたが、やがてティアナとスバルに視線を移すと呟くように話しかける。
「……ティアナとスバルは?」
二人は一瞬きょとんとした表情を浮かべるが、相変わらず言葉が足りない旧友に苦笑しながらも一緒に頷いた。
「まぁ、アスナがいれば退屈しないで済みそうね」
「あたしは嬉しいかな。また一緒に戦えるしね」
アスナは二人の言葉に少しだけ頷くと、桐生を見つめる。その瞳には明らかに兄を心配する色が乗っていた。桐生はそんなアスナを見てほんの少しだけ寂しそうに笑いながら、自分の本心を告げる。
「アスナは自分が正しいと思った事をやりなさい。他人や組織が語る『正義』などではなく自分の『正義』を信じなさい
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