第四話 〜アスナが勧誘されるお話 後編【暁 Ver】
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ますか?」
「いや、それは困ります。彼女だけ特別扱いにするわけにはいきません」
それを聞いた桐生は、腕を組みながら暫し考え込んだ。眉間に皺を寄せたまま考え込んでいる姿は八神はやてを否応なく不安にさせた。やがて。どれくらい時間が経ったろうか。はやてには酷く長い時間に感じていたが、桐生は腕組みを解くと先程までとは打って変わった穏やかな表情で、こう切り出した。
「それでは、こうしましょう。アスナの希望する日……そうですね、月に一度程度で構いませんので、こちらへ戻ってこれるようにして頂けますでしょうか。デバイスに関しては、私が一から作り上げた物ですので、フルメンテナンスはこちらで行い、定期的なメンテナンスはそちらでお願いできますか?」
「え、はい。それやったら……はい、平気やと思います。はぁ、吃驚しました。でも、良かったですわ」
ほっと文字通り息を吐きながら胸をなで下ろした、はやての横で──── 親の敵を見るように桐生を睨んでいるティアナに、はやては気付いていなかった。
このお兄さん、ホントにやってくれるわ。入ったばかりの一番下っ端が、本人の好きなときに月一で休める事が出来るわけだ。しかも、フルメンテと違って、デバイスの定期メンテなんてやろうと思えば自分達で出来る。アスナに不利なところなんて一つもない。もし、あたし達が管理局へ入る際に同じ事を言ったとしても問答無用で却下されたはずだ。
お兄さんがやったのは、過大要求法……ドアインザフェイスと呼ばれる交渉術の一つ。最初に相手側へ到底受け入れられないような条件を掲示してから、拒否されるのを見越した上で『本当に要求したいこと』を掲示する。相手にとっては最初よりも随分とハードルが下がったわけだから受け入れやすいのだ。
ここで『ミソ』なのが、最初の要求をする時は態度を真剣に。そして、断られた後は『腕を組みながら』随分と逡巡しているように『見せた』。その所為で、八神部隊長はかなり緊張していたはずだ。詐欺師にでもなればいいんだわ、お兄さんは。まぁ、決まってしまったものは仕方ない。アスナのデバイスを弄れないと聞いた時のシャーリーさんがどんな顔をするのか今から楽しみだ。さて……『本人』が、未だに登場していないのは何故なのか。
「あの……アスナは?」
よく言ったわ、スバル。その時──── この場にはいない『誰か』の声がリビング全体に聞こえた。
『桐生、アスナは屋根の上だ。お昼寝中だね』
「またですか」
今の声は誰なのかと八神部隊長がツッコむ前にお兄さんが天井を見上げた。……屋根を『何か』が転がっているような音が聞こえる。ごろりごろり。その場にいた全員が音を追うように視線を動かし──── 最終的にはリビングにある大きな窓に固定さ
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