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空を駆ける姫御子
第四話 〜アスナが勧誘されるお話 後編【暁 Ver】
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ている手札の一枚だ。稀少技能(レアスキル)『フェノミナ』──── 応用範囲を考えれば、文字通りの切り札になるはずだ。

 隠しておける手札は多い方がいい。これはアスナだけじゃなくて、あたしやスバルも持っている。八神部隊長に隠しごとをするのは気が引けるが、そう易々と教えるつもりもない。幸いにも八神部隊長はあたしの心中には気付かなかったようだ。アスナのおもしろエピソードを話ながら、車を走らせる事一時間弱。あたし達は見渡す限りの草原に立っていた。

「こないなとこ、あったんや……」

「……風が気持ちいい」

 都市部から外れた、まだ自然が残っている場所。深緑の絨毯が広がり、小高い丘には大きな木が立っている。それは大樹と呼んでも差し支えないほど大きかったが、不思議と圧倒されるような雰囲気はなかった。どちらかと言えば、包み込んでくれるような……或いは訪れた客人を歓迎しているようなそんな雰囲気。その草原の一角に彼女の家はあった。ログハウス風の一軒家。草原と大樹の景色と相まって、羊を追いかける牧羊犬が今にも出てきそうだ。

 八神部隊長は幾分緊張した面持ちでドアをノックする。さほど間を置かずにドアが開かれ、一人の男性が現れた。端末越しではあったが、あたしとスバルにとっては見慣れた顔。彼は人好きのする笑みを浮かべながら全員を視界に納めると歓迎の言葉を述べた。

「遠いところをようこそおいで下さいました。初めまして、八神さん。桐生と申します。それと……実際にお会いするのは初めてですね。ティアナさん、スバルさん。お変わりありませんでしたか?」

 あたしはこれぞ無難の見本と言われるような挨拶をして、スバルは元気がそのまま声になったような返事をする。彼……お兄さんはそれを見て、少しだけ複雑そうな色を乗せながら微笑んだ。






 社交辞令的なやりとりを済ませた後、リビングへと案内された三人は、はやてをティアナとスバルで挟むようにしてソファに腰掛けていた。対面のソファには桐生が座り、はやてと差し向かいになる形だ。間にあるテーブルには紅茶が運ばれ、甘い香りが三人の鼻孔をくすぐっていた。

 家の外観は典型的なものではあったが、内装は日本の様式であった。つまり……玄関で靴を脱いだのである。ミッドチルダでも玄関に『三和土(たたき)』がある家はそれほど多くはない。大抵は地球の西欧圏と同じで家の中でも靴は脱がないのだ。彼女達は知らないが、二階にある客間は畳のある和室であった。

 桐生は八神はやてから手渡された資料に無言で目を通していた。彼女から連絡を受けた際に桐生が彼女に提示したのは、機動六課に関する資料を『紙』で欲しい、というものだった。勿論、彼は管理局員ではないので機密に触れない程度の物を欲したのだ。

 渡された一般向け
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