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IFのレギオス そのまたIF
糸の紡ぐ先
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有能な武芸者はひどく貴重だ。それも、この都市随一の存在に特上と言われるほどならば。
 だが、そんなメイド達の考えなどどうでもよかった。もっと見せろと、そう言うかの如くつまらなそうな表情を浮かべる赤子を前に己の内に熱が宿ったのと感じていた。

 どこまで、見せられる。
 どこまで、理解できる。
 どこまで、扱える。

 錆びていくだけだと、そう思っていた。磨き上げたこの腕を、一度として使えぬと。この高みを存分に見せられるものなど、理解できる者など望めるのかと。
 だがもしも伝えられるのなら。この積み上げた日々が無駄でなかったならば。――この子に、鋼糸を教えられるのならば、埋まるやもしれん。
 この、空虚が。

 手慰みになればいいと、本来の目的とは別の代替の思い。だがそれは確かな熱だった。
 己が確かなやる気を持てる、己が技に意義を見いだせる目標。
 それが今、確かに己の胸にあった。

 困惑した表情を浮かべたメイドが一人、傍に寄って小声で言う。

「あの、どういたしましょうか。ご不満なら追い出しますが……」

 傍から見たら苛立っているように見えたらしい。こんな時、荒くれに見える見てくれが少し煩わしく感じてしまう。
 だが、追い出されてしまっては酷く不都合だ。

「命令だ。そいつを追い出すことを禁ずる。その子供に技を教えたくなった」

 明確な意思で己が出した、初めての能動的な命令。再度驚愕しているメイド達を気にも介さず、子を抱くメイドのもとへ歩みを進める。
 教える、と言ったが親の了承は必要だろう。もっとも、断られたとしても己の特権を使いある程度手を回すつもりではあるが。

「その子を弟子にしたい。現状のまま職も保証しよう。構わないか?」
「え、ええ。リンテンス様なら、断る理由はありません」
「そうか。なら、明日また連れて来てくれ。……そう言えば名前を聞いていなかった」
「メイファー・シュタットと申します。この子がレイフォンで、こっちの女の子がリーリン・シュタットです」

 メイドの名前まで聞いたつもりはなかった。だがそもそもメイドの名を覚えていなかったので別に問題はない。
 それよりも気になったことがあった。

「男の方はシュタットではないのか?」
「ああ、いえその、そういうわけでは……」

 どういったものかとメイドは言葉を濁す。だが黙って続きを待っているとメイドは続きを話し始めた。

「正確には、私の子供ではないのです。前の都市を出る時、火事に巻き込まれました。その時リーリンの横に何故かいたのがレイフォンで、親も見つからずこのままでは焼け死んでしまうと一緒に……そのまますぐ、都市を出たもので……リーリンはレイフォンに懐いていますし、見捨てるわけにも行かず私の子として育てよ
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