第三話 〜アスナが勧誘されるお話 前編【暁 Ver】
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官』を目指していたが、現在はそれほど固執してはいないらしい。
「ごめんなぁ。相席ええ?」
ティアナは微笑みながら「かまいませんよ」と返した。なんとなく話題作りの為に、むりやり若い女の子とコミュニケーションを取ろうとしている中間管理職(実際にはやては六課の課長でもあるが)のおっさんのような気分を味わいながら、思うだけではなくそれを告げると彼女たちは声を上げて笑った。
はやては自分で言うのも何だが、こんなところが自分の長所だと思っている。組織の中にいる以上、上下関係は必要ではあるが、階級や役職が上だからと言ってあまりにも他人行儀なのは寂しい。はやてにとって六課のメンバーは仲間であり『家族』という認識だった。今思えばこれが──── どこにでも有り触れた『偶然』が。運命という名の歯車が、噛み合わさる瞬間であった。
「変わった子?」
雑談に花が咲き、ティアナとスバルの訓練校時代に話が及ぶと、ティアナの口から『変わった子がいた』と聞かされた。訓練校を卒業すると同時に、なんの躊躇もなく辞めてしまったらしい。
「どう変わってたん?」
『彼女』の兄曰く、『軽めの社会不適合者』。訓練校始まって以来の問題児。自分からは殆どコミュニケーションをとらず、あまり表情が変わらない上に無口。自分より年上の人間や教官にさえ敬語を使わず、自分が納得できない教導は絶対にやろうとしなかったと言う。
「でも、ティアの言う事はちゃんと聞いたよね」
「それは、アンタもでしょ」
ティアナに指摘されたスバルは、短く切り揃えられた青い髪を僅かに揺らしながら肩を竦める。彼女たちの言う事は聞いたらしいが、この手のタイプはやたらとプライドが高い人間に多い。
「そないな子がよく卒業できたなぁ」
「ただの問題児でしたら退学でしたでしょうね。『魔力』は持ってましたけど、『リンカーコア』がありませんでしたし。彼女の体自体が魔力を生成する器官だとか、何とか。……入学の際もそれが原因で一悶着あったようです」
はやては特に驚きはしなかった。ここ『ミッドチルダ』では『リンカーコアが無ければ魔法は使えない』というのが一般論であり常識だが、彼女は第97管理外世界『地球』の出身だ。地球での常識は持ち合わせているし、世の中には不思議な事がたくさんあるとも思っている。だからなのか、リンカーコアが無くとも魔力を持っている人間がいても不思議ではないと考えていた。……それでもミッドチルダでは珍しいということには変わりはないが。
「彼女、稀少技能持ちなんです」
「あぁ、『特例措置』かぁ」
ミッドチルダでは魔法に分類されない能力を稀少技能と呼び、その名の通り稀少さ故にその能力を持っている者は
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