表彰式
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面持ちだ。
椅子が並びつけられ、他の学生たちは既に揃っていた。
案内された最前列。
そこに通されながら、アレスは怪訝とした面持ちで周囲を見た。
やけに大げさだなと。
「どうかしましたか、先輩」
「ああ。何かやけに大層な式典だなと思ってね」
「大層――そうですか?」
「少なくとも、今までの表彰式はこんなに飾ってはなかった」
渋い顔をしながら、アレスは過去の表彰会場を思い出す。
「それに教官たちもあんなに緊張はしてなかったな」
「といいますと」
「普通とは違う――なんだ、統合作戦本部長でも呼んだか」
「やめてくださいよ。ただでも緊張するのに」
その疑問はすぐに解けることになった。
アレス達が席に通されて、すぐに学校長を初めとして偉い方が姿を見せたのだ。
一人一人、式の進行役が名前を呼び、そして。
『本日の来賓――ヨブ・トリューニヒト国防委員です』
最後に呼ばれた名前に、アレスは渋い顔を通り越して、頭を押さえた。
+ + +
名前を呼ばれて案内される人間は、壮年の舞台俳優のような男であった。
周囲に笑顔を振りまけば、一つ一つの動作が演じられた役者のようだ。
いや、ヤン曰く実際に演じているのだろう。
国防委員として。
そうするのは構わないが、点数稼ぎに使われるのは面白くはない。
「なんで、今年から国防委員まで出席するのですか」
「学校長が代わったからな」
アレスの囁きに、隣でサミュールが不思議そうにアレスを見た。
確かに今年の頭から更に学校長は代わっている。
しかし、それと今回の国防委員にどのような関係があるのだろうかと。
「トリューニヒト議員と学校長がお知り合いなのですか」
「そんな話は聞いたことはないな」
想像を膨らませたフレデリカの言葉に、アレスは否定をする。
大方、上の点数稼ぎで使われたのだろうな。
声にはださず、アレスは小さく息を吐いた。
それまで戦術シミュレート大会は、あくまで学校の行事の一環であった。
そのため存在こそは知っていても、公にされる事は少ない。
ましてや、議員の来訪などあり得ない。
だが、学校長が点数稼ぎの一つとして上に報告すれば別だ。
人材育成のための効果的な施策と報告し、そこに国防委員のマスコミ向けの良い広告材料であると飛び付いた。
既にシトレ学校長も、スレイヤー教頭もいない現状であれば、過去の経緯など知っている人物がいるはずもない。かくして、戦術シミュレート大会は宣伝材料となって、ヨブ・トリューニヒトのような甘い蜜を求める人間に狙われることになる。
そう考えれば、フォークがあまりにも有利であった原因も理解できた。
学校としても単なる一士官よりも
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