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空を駆ける姫御子
第二話 〜始まる前のお話 後編【暁 Ver】
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に晴れていく。ナギは──── 無傷で立っていた。杖を振り下ろしたまま。桐生は片膝をついている。右肩から脇腹までがごっそりとなくなっていたが、既に再構成が始まっているようだった。

「遅延、魔法ですか。よくもまぁ、タイミングを合わせましたね」

「お前を完全に消し飛ばしてから嬢ちゃんを確保。再構成する前に封印するつもりだったんだが、な。桐生、俺に何をした。魔法が発動する瞬間、魔力が抜けちまった。その所為で本来の威力が出なかった」

 再構成が済んだ桐生が立ち上がる。

「『Stealer【泥棒】』という能力でしてね。完全に発動すると私が『異能』と認識したものは資質ごと盗めるんですよ。ですが、絶妙なタイミングで負傷した為に中途半端に発動したようですね」

「そういう事か。……どうりで魔力が減ってるわけだ。単純に魔力を消費したわけじゃないな。器ごと小さくなってる感じだ。まーた、修行し直しかよ」

 ナギへと近づいたイマは、確かに魔力が減少しているのを感じていた。傍にいるだけで肌が粟立つような強力な魔力を感じられなくなっている。桐生は中途半端に発動と言った。では、完全に発動したならば────

「え、おまえ俺を一般人にする気だったのかよ」

 桐生が言ったのはそういう意味だ。

「おまえ、幾ら何でも短絡的過ぎるだろうよ……要領が悪いって言われないか」

 桐生はわかりやすく口をへの字にした。

「あなただって、私を封印する気だったんでしょう?」

 イマから言わせると、どっちもどっちという感じではあるのだが。ほっと胸を撫で下ろす。何にせよ二人とも無事だったのだから。イマは子供じみた二人の言い争いを見ながら、桐生が入った頃の懐かしい光景を目を細めながら見ていた。

「あぁ、もう頭きた。もうお前なんか知るか。何処へでも行っちまえ!」

「言われなくても行きますよ」

「ったく。痛っ。……なんだ?」

 ナギは突然感じた後頭部の痛みに思わず声を上げた。何事かと思いながら下を見ると石が転がっている。そして視線を上げると……件の小女がナギへ向かって石を投げようとしていた。

「え、ちょっと待て。ちょ、あ痛」

「……あっちいけ」

 これに目を丸くしたのは桐生だ。彼はアスナへと駆け寄ると瞳を覗き込む。少し、涙目だった。

「アスナ、あなた感情が」

 桐生が何者かに傷つけられた。それが切っ掛けだったのだろうか。感情を抑えられているのであれば、感情が爆発する様なことを経験させれば良い。桐生もナギもお互いの信念に従ってぶつかっただけではあるが、それをこの年齢の小女に理解しろと言う方が無理だろう。そんな二人を見ていたナギは突然、芝居がかったような笑い声を上げた。隣にいたイマは頭を抱えている。


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