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空を駆ける姫御子
第二話 〜始まる前のお話 後編【暁 Ver】
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本気で泥棒だと信じた為に誤解をとくのに苦労する事になるのだが……それはまた別のお話。






「……」

 宮殿最奥部からアスナと共に『跳んで』外に出た後、これからどうするか彼女に尋ねたときアスナは桐生に対して、彼の顔を見つめるだけで何も答えなかった。何の道、彼のやることは決まっているのだから深く考えないようにした。

 彼女の服装はよく似合ってはいたが、目立つので普通の少女が着るようなワンピースや靴などを一式購入し着替えさせた。そうやって『旧世界』へ渡る為の準備をしていたが──── 桐生とアスナは一週間経っても『魔法世界』に留まっていた。旧世界へ渡る為のゲートを使用する人間が検閲を受けている。手荷物だけではなく容姿を念入りに……特に子供を。明らかに桐生とアスナを探しているようだった。もっとも、誘拐とさほど変わらないので仕方ないと考える。探させているのは──── 恐らく想像した『彼ら』だろう。近いうちに彼らと対峙しなければならない事に溜息を吐きつつ、葉に留まっていたバッタに心を奪われていたアスナへと声を掛けた。

「アスナ? 旧世界へ行くのはもう少し後でもいいですか? なに大丈夫ですよ。少々、やる事が出来ただけですから」

 彼女が不安にならないようになるべく優しく問いかける。彼女はコクリと頷くと桐生の手を握った。『瞬間移動』は使えない。宮殿最奥部から跳ぶのとはわけが違う。桐生の瞬間移動に必要なのは跳ぶ先のイメージだ。旧世界が桐生のいた世界と同じとは限らない。同じかもしれない。だが、下手をすれば転送事故だ。意図した場所と違うところへ跳ぶのならまだいいが、アスナと共に『壁の中にいる』状態になりかねない。自分一人ならどうとでもなるが、アスナはだめだ。そんなリスクは冒せない。さて、どうしたものかと考えていると、アスナが桐生の顔を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「……おなかへった」






 それからさらに一週間後。桐生とアスナは森の中の開けた場所で焚き火を熾し、夜を明かしていた。川で捕った魚に塩を振って焼いただけの簡単なものではあったが、アスナは三匹もたいらげた。今はお腹がくちくなって眠くなったのか、焚き火の前で船をこいでいる。その時、唐突に人の気配がした。

「よ、桐生」

 桐生はあからさまに溜息をはいた。あまり会いたくない人物だった。まるで、同級生に街中で再会したような口調だ。だが、どうしたことか人数が足りない。今も彼の傍にいるのはイマだけである。桐生は違和感を憶えながらも──── ナギへ視線を合わせた。

「……他の皆さんは?」

「ん、ああ。大丈夫だ、隠れて不意打ちしようなんて思ってない。俺とイマだけだ」

「彼女を連れ戻しに来たのでは?」

 アスナは突然の見知らぬ来訪者
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