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空を駆ける姫御子
第一話 〜始まる前のお話 前編【暁 Ver】
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かけ無限に広がるIFの世界、所謂『平行世界』へ転生させる。力を与える理由は、言わずともわかるだろう。問われた人間は、ほぼ例外なく喜々として転生したそうだ。それが──── 理由だ。

 私が疑問に思ったようにやはり、デメリットはあった。彼女の手で転生させた人間は死んだ時点で──── 消滅するそうだ。人間は死を迎えると『輪廻の環』という『洗浄システム』によって魂は洗浄される。これは生前の記憶や経験をリセットする為らしい。洗浄された魂は『天界』と呼ぶ『貯蔵庫』へ一時的に保管され決められた周期に従い転生する──── 出荷だ。工場のベルトコンベアに流れていく商品を想像した私を誰が責められようか。

 彼女曰く『異能』は『魂』に依存する。彼女は意図的に魂を加工し異能を付加する。希ではあるが、自然に魂が変質する場合があると言う。魂の変質は肉体だけではなく、精神にも影響が出ることが多く精神的な疾患と診断されるケースの何割かは、これに該当すると言う。魂の変質が酷い場合には人間的な思考は失われ、肉体も人とは言えないほどに変わってしまうこともあるそうだ。彼女はそれを何と言ったか……あぁ、そうだ。人から帰ってこられないという意味を込めて──── 『カエラズ』。「あなたには関係のない『話』だ」と言われ詳しくは教えて貰えなかったが。閑話休題。

 自然に変質した場合は問題はない。だが、彼女の手で加工された魂は自然の摂理と呼ばれる『システム』に従わない。肉体の機能が停止すると魂は肉体から離れ『輪廻の環』がそれを回収する。ここで問題になるのが『輪廻の環というシステムが加工された魂を『魂』として認識出来ない』と言うこと。要は原材料のチェックだ。益々、工場染みてきた。一種のエネルギー体である魂は肉体がなければ生きていけない。維持する為の栄養を摂取する為の手段がなくなるからだ。存在し続ける為に持っているエネルギーをどんどん消費させていき……最後は消えていく。

 魂という存在になり人として生きてきた記憶や経験を全て『システム』に消されるのと、どちらが良いのか。私には判断がつかなかった。『輪廻の環』へと帰り、再び人として生まれたとしても。以前の自分はそれを知る術はないのだから。






「あなたが転生させた人へ、この話をしたことがありますか?」

 彼に問いかけられた私はそのまま俯いてしまう。……あるわけがない。話しても良かったかも知れないが、以前の私には『話す』という選択肢すら思い浮かばなかった。たかが、人間にだ。彼に話したところで私のやることはこれからも変わらない。ただ。『転生』の作業はもうしないことに決めた。元々、やらなくても特に影響はないことだ。『力』を与えた人間が人外の力を惜しげもなく振るい優越感に浸る姿と、自分の思考や行動がトラブルを呼び込んでいる
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