二十二 道化を捨てた男
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。甘さは必要ないんですよ」とハヤテの言葉が思い出される。同時に忍びである火影の記憶が、油断するなと囁いてきた。
だが横島は音忍の言葉に頭を振った。
「べつに、アンタ達を殺したいとは思っていない。クナイについてた毒の解毒剤置いてさっさと行ってくれよ」
ハヤテの身体を蝕む毒を考慮して横島は言う。元々彼は音忍達を殺す気など更々なかった。ただハヤテを守りたい、ナルトを馬鹿にされて腹が立った…それが横島の闘う理由だった。
横島の言葉を聞いて、音忍は懐を探る仕種をする。解毒剤を受け取るため横島は手を伸ばした。解毒剤に気を取られていた横島は、音忍の口元が弧を描いたのに気づかなかった。
ぎゃんッ!
破璃の鳴声で思わず気が逸れる。クナイで前脚を斬りつけられた破璃の姿が視界に入った。
どうやら先ほど本当に気絶したか確かめなかった音忍が破璃にクナイを投げたようだ。そのどす黒い傷跡から、自身やハヤテと同じく毒つきクナイで斬られた、と察した横島は、破璃を更に傷つけようとする音忍目掛けてサイキックソーサーをぶん投げる。横島のほうへ注意を向けていなかったらしいその音忍はあっさり気絶した。
ほっと安堵する。しかしそれが命取りだった。
「………ッ!?」
音忍が解毒剤を取り出すふりをしてクナイを出す。そしてそれを横島の顔面目掛けて鋭く振るった。
あわやというところで横島はそのクナイをかわす。だが、チッという音と共に頬に鋭い痛みが走った。
頬に出来た切り傷から一筋の血がゆっくり流れ、若干口内へ侵入する。僅かな塩辛さと鉄臭さが舌の上でぬるりとした。熱くも冷たくも無く、ただ温い。
「甘えんだよ!その甘さが命取りだッ!!」
勝ち誇ったように音忍は叫び、再びクナイを振り上げた。跨っていたはずが逆に跨れ、状況は寸前とは一転した。
切っ先に横島の血を滴らせたクナイがギラッと鈍い光を放つ。
形勢が逆転し、横島の上で馬乗りになった音忍が高らかに嘲笑った。横島と違いその瞳には確かに殺気が宿っている。
振り下ろされるクナイの切っ先。それがやけに緩慢な動きに見え、横島は内心自嘲した。
(――――ナルトの言う通り、俺は忍びには向いてねえや……)
破璃が一際大きく鳴いた。その鳴声がなぜか嬉々としていたため、今正にクナイで喉元を掻っ切られそうになりながらも横島は疑問を抱いた。
「眼、閉じてろ」
刹那、横島の視界の端を金色が掠めていった。
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