二十二 道化を捨てた男
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かと思えども、戦場を駆け巡った音忍のほうが力は上だった。
「く…」
苦悶の表情を浮かべた横島に音忍が一瞬気を緩める。だが次の瞬間、横島はおもむろにその場にしゃがみ込んだ。刃物同士の押し合いを力の限りしていた音忍は相手が蹲ったため前屈みになる。
そんな彼の額を、後ろから横島の頭上を突っ切ってきたサイキックソーサーが掠っていった。
「がッ!?」
六角形の鋭い切っ先が音忍の額の皮一枚を切っていく。たらりと額の切り傷から流れる血が音忍の眼の中に入った。その隙を狙って横島は再び霊波刀でその音忍の頭を殴る。
視覚を一時失っていた彼は呻き声を上げ地面に倒れ伏す。本当に気絶したかどうかを確認しようとその音忍に横島は近づいた。
だが他の音忍が、横島の背後に忍び寄り刀を振り上げる。
「サイキック猫だまし!!」
「うっ!?」
後ろの気配に気がついた横島は、自分目掛けて刀を振り下ろす音忍の眼前に向かって両手を打ち鳴らす。濃霧の中を一瞬閃光が駆け抜けた。
両手に霊波を放出しながら相手の鼻先で手を叩き、目を眩ませるという、[栄光の手]の応用技である。
目眩がし、足下が覚束ないその忍者を先ほどの音忍同様気絶させようとした横島だが、何時の間にか接近していた他の音忍の投げてきた手裏剣に阻まれる。
急ぎそちらのほうに霊波刀を身構え、それら手裏剣を弾き返す横島。どうやら見えない角度から手裏剣を投げてきたようで相手の姿は全く見えない。そろそろ視覚の働きを封じるこの霧を鬱陶しく感じて、横島は地面のあちこちに散乱して突き刺さっているであろうサイキックソーサーに集中した。
「……弾けてまざれっ!」
花火を打ち上げるように握っていた手をぱっと開く。途端、そこら中で爆発音がした。あちこちで軽くではあるが爆発するのは、最初に音忍達が投げてきた手裏剣と激突したモノである。
盾ではあるが投擲する事で攻撃出来るサイキックソーサー。触れれば軽い破裂音と共に爆発する。
ならばその場で爆発させる事も遠隔操作出来るのではないか、と横島は考えたのだ。
「爆薬か…何時の間に仕込んだんだ!?」
だがサイキックソーサーが爆発しているとは思いもよらぬ音忍は横島が地中に地雷でも埋め込んだのかと勘違いする。下手に動かぬほうが良いと判断し直立不動の体勢をとる彼らをよそに、横島は[栄光の手]を伸ばし高所の木の枝を掴んで上昇した。木の太い枝に乗って眼下の状況を把握する。
爆発により撒き上がった白煙が逆に霧を吹き飛ばしていた。
朦々と立ち込めた白煙が、霧とは違い、中にいる人の影を映し出す。
その影がいる位置に向かって、横島はサイキックソーサーを投げつけた。
いきなり上から来るとは思わなかったのだろう。当たったらしい二人が倒れていくのが見えた。だが他
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