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悪霊と付き合って3年が経ったので結婚を考えてます
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秋A〜あるドラマーの休日〜
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usic”の文字。
まさに聞いていた店そのものだった。

「ほーら!! 言った通りだろ!? さぁさぁ、お二人さん。お店の前で突っ立ってるのも迷惑だし、入ろう入ろう!」

 僕はそう言いながら後ろから友人二人の背中を押す。
ここまでたどり着くのに1時間以上はかかってしまったが、実は駅から10分で着くと聞いていたことだけは二人には内緒にしておこう。
僕はそう強く心に決めた。











 店に入ると白髪交じりで目つきのキツイおじさん、いや、もうお爺さんと呼んだ方がいいだろう男性が、いらっしゃい、と無愛想に挨拶をしてきた。
そして、店内を見るや否や、二人の目に輝きが宿る。
外見同様、内装もあまり綺麗とは言い難いが、聞いていた通り、いや、それ以上に品ぞろえは充実していた。年代物のギター、なかなか手に入らない楽譜、はたまたプレミアが付いているんじゃないか、と思えるほどのレコード。そのどれもが音楽好きなら魅力的に見えるものばかりだ。尚且(なおか)つ、かなり安い。いつも家の近くの大型楽器店で買っていたのがバカバカしくなるほどだ。

「うおー!! すげー!! このギター、普通に買えば70万近くするやつだぞ! それが50万って…。じいさん、これ試演してみてもいいか!?」

拓海が浮かれたように指差す先にはガラス張りの棚に飾られた一本のギターがあった。

「ダメだ。それはもうすでに売約済みだ。買い手以外には触らせられん。」

マジかぁ、と言いながらガクッと肩を落とし、売れたら俺もこんなギターくらい、とブツブツ呟いている。

「あぁ!! あたしはこのレコード欲しかったんだよ! ネットで探しても見つからなかったのに! かなり古いもんだから絶対どこにもないと思ってたんだよ! まさかこんな近くにあるなんて……」

 愛華はレコードを抱きしめながら、その豊満な胸を押し潰す。
愛華って結構胸あるんだよなぁ、と横から眺めるように見ていると、それに気がついたのか、キッと(にら)み返される。
おぉ、怖い……。
僕は、サッと何も見ていなかったかのように目を背け、せっかくだからドラムスティックの1本でも買って帰ろう、と店内をうろつき始めた。








 しばらく経って、二人とも目的のものを手に入れたころには時間はすでに4時を回っていた。そう考えると僕たちはこの店に2時間近くいたことになる。それだけ、この二人にはこの店が魅力的に感じていたのだろう。
二人とも、店主に、また来るよ、と告げ、店を出ていく。
僕もそれに付き添うように店を後にしようとしたときだった。

「……おい、お前さん」

 店主のいきなりの呼びとめに周りをキョロキョロと見渡し、それが自分に向けたものだと気づき、僕ですか
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