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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十八話  汚染
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の時間をかけたのだ。あの無様さで同盟と戦うとだと? 向こうにはヴァレンシュタインが居るのだぞ、一千万の兵を殺した男が居るのだ、分かっているのか? お前などあっという間に捻り潰してしまうだろう、話にならんな」
想定内の答えだったが敢えて呆れた様な声を出した。フレーゲルの顔が屈辱に歪んだ。

「あれは本気では無かったのです。本気ならもっと早く片付けられました!」
「だから戦わせろというのか? 今度は本気を出すと?」
「そうです!」
「当てになるとは思えんな、相手は戦争の専門家でさえ恐れる男だ。素人のお前達に勝てるものか、命を落とすだけだ、止めておけ」

「勝てます! 我らが本気になれば、勝てます!」
「……」
「勝てるのです! 伯父上!」
またフレーゲルが一歩近付いた。
「……勝てるのか? 本当に?」
「勝てます!」
希望が見えたか、眼が輝いている。甘いぞ、フレーゲル、だからお前は駄目なのだ。

「同盟は十万以上の兵力を動かす、お前にそれだけの仲間を集められるのか?」
「……それは……」
「なら無理だな、軍は一兵たりとも動かせん」
「伯父上!」
口惜しそうな表情だ。

「……目覚ましい武勲を上げ、ヴァレンシュタインを殺したならエリザベートの婿に考えても良い」
「おお、伯父上!」
「但し、失敗は許さん。それだけは覚えておけ!」
「必ずや、ヴァレンシュタインを!」
「うむ、期待している」
昂揚したフレーゲルの顔を見ると少しだけ胸が痛んだ……。

弾むような足取りでフレーゲルがわしの執務室を出て行くと入れ替わる様にリッテンハイム侯が入って来た。沈痛な表情をしている。
「今フレーゲル男爵に会った」
「そうか」
「エリザベートの事、聞いた」
「そうか」

少しの間沈黙が有った。
「公に力添えしてもらったと大分喜んでいたのでな、武勲第二位の男はサビーネの婿にすると励ましてやった」
「……そうか」
「……公だけに背負わせはせんよ」
「……済まぬな、リッテンハイム侯」
リッテンハイム侯が気にするなというように首を横に振った。

「今夜、久しぶりにどうかな? これは」
リッテンハイム侯がグラスを干す仕草をした。
「そうだな、久しぶりに飲むか」
「では決まりだ、酒は私が用意する」
「楽しみだな、つまみはわしが用意しよう」
楽しい会話だ、久しぶりに酒が飲める。それなのにリッテンハイム侯は哀しそうな顔をしていた……。




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