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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十八話 汚染
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。溜息が出た。
「いっそ君の船で身柄を預かるというのはどうかね、その方が安全なような気がするが……」
『ハトホルでですか? まあ私は構いませんが他が納得するでしょうか? ルビンスキーを調べたがる人間は多いと思うんですが』
シトレが顔を顰めた。
「まあ君が戻るまで時間は有る。その間に考えよう」
「それよりこれはサンフォードを引き摺り下ろして政権を取るチャンスだと思うが……」
私が提示すると皆が無言で互いの顔を見合った。
「確かにそうだが受取人はバラースだ。サンフォードまで辿り付けるかな」
「ルビンスキーの証言だけではな、難しいかもしれん。バラースが吐けばいいが……、他にも証拠がいるだろう」
なるほど、トリューニヒト、ホアンの言う通りかもしれん。今一つ何かが要る。
「もう一つ問題が有るぞ、レベロ。サンフォードを引き摺り下ろしたとしてその後どうやって政権を取るかだ」
シトレの指摘に皆が顔を見合わせた。
「……暫定政権だな、取り敢えずは。評議会内での支持を取り付け最終的には同盟議会で承認を得る」
「君の考えだと多数派工作が要るな、トリューニヒト」
『そういう事になりますね。評議会は十一人、二人外れますから九人です。過半数を取るには最低でもあと二人の支持は要る。誰を取り込むか……』
私とヴァレンシュタインの指摘に皆が沈黙した。
副議長兼国務委員長ジョージ・ターレル、書記トーマス・リウ、地域社会開発委員長ダスティ・ラウド、天然資源委員長ガイ・マクワイヤー、法秩序委員長ライアン・ボローン、経済開発委員長エドワード・トレル、この六人の内二人を取り込まなくてはならない。
「ターレルとボローンは難しいだろう。トリューニヒトに強い敵対心を持っている。選ぶのなら他の四人だな」
「四人の内二人か、厳しいな。しかも頼りになるとも思えん連中だ。やる気が失せるよ」
ホアンと私の会話に皆が失笑した。シトレが“口の悪い奴だ”と言うから“悪い連中とばかり付き合ったせいだ”と言い返した。ヴァレンシュタイン、心当たりが有るだろう。
『いっそ面倒な二人を取り込んでは如何です?』
「正気か、ヴァレンシュタイン」
『正気ですよ、レベロ委員長。厄介な二人を取り込めば後の四人は済し崩しに味方に付く、そうじゃありませんか。後々の政権運営も楽です』
皆で顔を見合わせた。なるほど、流石に悪い奴だ、碌でもない事ばかり考え付く。トリューニヒトが笑い出した。
「面白い考えだ、やってみる価値は有るな」
「勝算が有るのか、トリューニヒト」
私が問い掛けるとトリューニヒトが頷いた。
「ターレルはともかくボローンは可能性が有る。フェザーンから金が流れていた事が事実ならこいつは警察が動くのが筋だ。それを利用して取引できるかもしれない」
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