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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十八話  汚染
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今まで、政権を安定させてきた一つの要因がフェザーンからの資金援助なのでしょう。彼はそれを使って味方を増やしたんです』

「馬鹿な! 冗談だろう! 最高評議会議長がフェザーンの飼犬だというのか、高等弁務官じゃないんだぞ、最高評議会議長だ!」
ホアンが吐き捨てた。事実なら同盟政府はフェザーンのコントロール下に有ったという事になる。ホアンの身体が震えている、怒りか、それとも恐怖か。

「可能性は有るな……」
シトレが低い声で呟いた。そして驚く皆を見ながら言葉を続けた。
「地球教の事を知った時の評議会の事を覚えているか? サンフォード議長はルビンスキーをフェザーンに戻せと言っただろう」
「なるほど、あれか、……皆呆れていたな」
トリューニヒトが頷いた。確かにあれが有った……。

「こう言ってはなんだが議長の政治家としての能力に対する評価は決して高くない。最高評議会議長に選ばれたのもなり手がいなかったからから消去法で選ばれた、いやむしろ偶然と言われていたくらいだ。もしかすると代議員に金を送って票を買い取ったのかもしれん。その方が納得がいく……」
シトレの言葉に皆が顔を見合わせるとホアンが“世も末だな”とぼやいた。

「ヴァレンシュタイン中将の言うようにサンフォード議長から金が流れていた、それが政権安定の一因だとすると厄介だな、フェザーンの毒が何処まで回っているか……」
「いや、レベロ、貰った方はフェザーンからとは思っていないだろう、議長からだと思ったはずだ」
「なるほど、多少は気休めになるな」
私の答えにトリューニヒトが苦笑を浮かべた。

『フェザーンからの資金提供はフェザーン自治領主府が所有するダミー会社、複数を使って行われているようです』
「ダミー会社? 会社名は分かるかね」
私が問い掛けるとヴァレンシュタインが首を横に振った。
『実務は補佐官がやっていたようで全ては把握していないそうです。ただフレディロジスティクス、アランコーポレーションは間違いないと言っています。使っている銀行はクレイトン銀行だとか』

ヴァレンシュタインの言葉に皆が顔を見合わせた。
「どうやら本当の様だな」
「確認をする必要は有るだろう、レベロ、出来るか?」
「財政委員会を甘く見ないで欲しいな、ホアン。企業名と使用銀行が分かっているなら難しくは無い、やってみよう」
私が答えると皆が頷いた。

「ルビンスキーの身柄は軍で預かろう。シトレ元帥、そちらでお願いできるかな」
「国防委員会では無く?」
「こっちには金を受け取った人間が居るかもしれない、信用出来んよ。こうなると誰が味方なのかさっぱりだ」
トリューニヒトとシトレの遣り取りにヴァレンシュタインが“世も末ですね”と笑った。ホアンは嘆いたがこの根性悪は笑っている、とんでもない奴だ
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