第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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した少年の――はじめの、もので。
「一文字ヒトツでございます」
「「「ええええ!?」」」
「わうーん」
泣きそうに潤んだ灰色の目でこちらを見上げたはじめ――ヒトツの姫に、マナたちは暫く唖然としていた。
+
「父上、ヒトツが参りました」
指を整えて、お辞儀。入れ、という声に戸を開け、優美な仕草ではじめは中に入っていく。自然と体が固まってしまい、こわばった仕草でマナとユヅルもお辞儀をした。ハッカもお辞儀をし、紅丸は服従を示す為か腹を上へ向けている。
――この犬、アタシにすらそんな仕草見せたことないくせに
長いあやめ色の髪の男性が、静かにそこに座っていた。左側の髪だけを低いところで団子状に纏めている。彼こそが現一文字家当主、一文字一矢だ。中性的な顔をしている。
ハッカがはじめが任務に赴くにあたって命の危険があるかもしれないことなどを述べると、彼はすんなりと頷いた。一文字は忍びの一族。そんなことなど承知の上だったはずだ。
「だが――現時点でこの家を取り仕切っているのは私ではなく、長女の初だ。彼女は大層ヒトツのことを気に入っていてな、」
つまり一文字初の許可を得ねばならないらしい。びくっと体を震わせて、オレンジの髪飾りをしゃらしゃら鳴らしながら、はじめは「失礼します」というなり、ゆっくりと歩き出した。
+
「……姉上、ヒトツが参りました」
「どうぞお入りなさい、ヒトツちゃん」
優しい声が答えて、はじめはそろりそろりと中に入った。ハッカがお辞儀をし、ユヅルがそうっと戸を閉める。
初姫は、長い紫の髪を垂らした美しい少女、いや、二十代はじめあたりの女性だった。はじめとおそろいの着物を身に纏い、赤い帯を締め、小首をかしげてゆったりと微笑んでいる。日向ぼっこしていた猫のようにとろんとやや眠たげな目だ。
「初と申します。本日はわざわざお越しいただき、誠にありがとうございますわ。いつも妹のヒトツちゃんがお世話になっておりますわね」
――妹?
はじめがこの家での身分はどうやら初の妹、一文字一矢の娘であり一文字家の次女、ということになっているらしい。はじめはアカデミーで一番早く声変わりしだした少年だ。そんな彼が、どうして女の身分で女の服装で過ごさねばならないのだろう。しかもはじめは、明らかにこれを喜んではいないのだ。もしこれが一族の掟だったり、もしくははじめ自身の特殊な性癖であるとしたら話は別だが――これは強制されているようにしか見えない。
「え、ええ――お、いえ、妹さんは大層優秀で」
「次席などに意味はございませんわ。火影の名は誰にもずっと覚えられます。ですが火影候補の名はそこまで知れ渡るわけではございません。いいえ、例え覚えられたとしてもそ
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