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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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しまった。
 ユヅルが、背が高くて羨ましいと言った兄は、二日後に山に出かけて以来帰ってきていない。
 ユヅルが、長い髪が綺麗で羨ましいと言った姉は、一週間後にその髪で自分の首を絞めて死んでいた。
 ユヅルが、力持ちで羨ましいといった兄は、五日後に街に出かけて、馬に踏まれて死んだ。
 ユヅルが、誰にも好かれて綺麗で羨ましいと言った姉は、その日の内に人攫いに攫われて、どこかへ売られてしまった。
 ユヅルが、友達がたくさんいて羨ましいと言った兄は、四日後に友達の一人に殴られて死んでしまった。

「あたしも、すっげえ怖かったんだ、ユヅルがいつあたしのこと羨ましいって言うんじゃないかって。怖くて」

 だから疫病神なのか、とマナは納得した。なるほど、確かに呪いのようだ。
 ――ごめん、これから食べ物とか出来るだけわけるから、アタシのこと羨ましいだなんて言うなよ

「そんでね、八歳ん頃にね。貴方忍びの才能あるんじゃないって言われて、ユヅル、アカデミーに連れてかれたの。父ちゃん、すっげえ喜んでね」

 でもきっとその父が喜んだ理由は、ユヅルがアカデミーに行ったからじゃない。家を離れたからだ。

「だからこうして会うのは、すっげえ久しぶりだよ。でも家のことは、なんも話さない。いったら、羨ましいって言われちゃうかもしれないしね」

 妹のヤバネでさえ、恐れているのだ。六人の姉や兄たちが死ぬきっかけとなったユヅルの言葉を。「羨ましい」という呪文を。
 ちょっとだけ、悲しくなった。自分が思い描いていた「家族」の像とは全く異なった「家族」の像に、現実はそんなに甘くないんだぞと、冷や水をかけられたみたいだった。

 +

「ユヅル」
「……ん」

 泣き腫らしたユヅルの肩を、ハッカが抱いていた。その髪を撫でて、ヤバネに向かって手を振ると、ヤバネも手を振りかえしてきた。その顔はちょっとだけ寂しそうだった。
 ヤバネに言われたことは――忘れておくことにしよう。心の中で呟いて、マナたちはその村を離れた。

 +

「すいません、はじめくんは――」
「ヒトツの姫さまですね。少々お待ちくださいませ」

 にこりと笑った茶髪の召使いがすっすと広い廊下を突き進み、マナ、紅丸、ハッカとユヅルはぽかんとしてその場に立ち尽くした。

「ヒトツの姫ぇ? 確かに無駄に可愛い顔してっけどさぁ」

 と呟き終えるか終えないかの内に、廊下の向こう側から、誰かが歩み寄ってきた。
 紫の地に水色の小鳥が空を舞う着物に、淡い水色の帯。紅を塗った唇、真っ白い瞼に頬紅を塗ったのか薄っすらと赤い頬。あやめ色の髪にはオレンジ色の髪飾り。

「ようこそいらっしゃいました」

 頭を下げたどうみても女にしか見えないその子の声は、間違いなく声変わり
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