第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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だに呆然としているマナに向かって合図した。
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「ほら。粗茶だけどさ、どうぞ」
「あ、どうも」
ヤバネはボンネットを脱ぎ長靴を脱ぎ、手袋を取り、お茶をいれてくれた。ぼろぼろの色褪せた茶色っぽい服を着ている。どうやらそれは元は赤だったそうだ。ヤバネ曰く、この服は長女のものだったらしい。
「あたしとユヅルはな、双子なんだ。そんで、あたしが妹。皆信じないけどね。皆あたしのこと姉だと思ってんだよ。ユヅルがあんまりナヨナヨしてる所為かな」
粗茶とヤバネは言っていたけれど、お茶はとても美味しかった。
マナもユヅルが前もってヤバネが妹だと教えてもらえなかったら、ヤバネの方が妹だとは気づかなかっただろう。なんというか、おどおどとしているユヅルよりも、つっけんどんで、でもしっかりしているヤバネの方が姉、という感じがする。
「あんたがユヅルのチームメイトになる女ってことだからこそ言うんだけど」
と彼女は前置きして、そして
「あんね」
という一言と共に話を始めた。
+
いとめヤジリとその妻、いとめユギは従兄妹同士であり、また従兄妹同士での婚姻は雲に於いて基本禁止されていたのだ。二人は所謂「駆け落ち」というものを実行し、木ノ葉に逃れてきた。忍びではないために追い忍に追われることもなかったし、近親婚ということが影響してか子供達は白髪に白い肌、赤い目をして日に弱かったけど、それでもヤジリとユギは幸せだった――ユヅルとヤバネが生まれるまでは。
いとめ家はひどく貧困で、新たに生まれた双子のユヅルとヤバネを養う力はなかったのだ。どちらか一方だけならまだなんとか出来る。でも二人までは。だから二人は双子の片方を殺すことを決意した。
普通なら、畑仕事が出来る男のユヅルではなく、女のヤバネが殺されるはずだったのだろう。だけどその時いとめユギが泣きながら絞めたのは、ユヅルの首だった。ヤバネもどうしてだったのかわからないし、ヤジリだってよくわからなかった。ただわかったのは、ユヅルの首を絞めたユギは、突然家の中に入り込み、襲い掛かってきた野良犬にかみ殺されて死んだのだという。
ヤジリはユギの死を悲しみ、嘆いた。彼はユヅルを殺すのも、ヤバネを殺すのもやめた。けれどヤジリはユヅルを忌々しく思うようになり、ヤバネを疎ましく思うようになった。そして次々に、ユヅルの姉と兄が死んでいった。ヤジリはユヅルを、憎むようになった。
+
「双子だったからね。もし母ちゃんが死んだのがユヅルの力だったなら、あたしにもその力が宿ってるかもしれないだろ。あたしにはないけど。――あんね、ユヅルは呪いの力を持ってるんだよ」
「……呪い?」
ユヅルが、頭がよくて羨ましいと言った兄は、三日後に高熱を出して、そのまま死んで
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