第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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アカデミーに就学している全ての生徒が忍の家の出とは限らず、時に才能を持った一般人がスカウトされることもある。隠れ里のようにいつ忍びの闘いに巻き込まれるかもわからない里に住む者など大抵が貧困な家庭の生まれだったり、移民だったりすることが多く、だから忍びという任務によっては膨大な給料を得られる上に大名からの援助を受けることも出来る職業をやらないかと問われて食いついてくる者も多い。いとめユヅルが正にその代表例だった。
ぼろくさそうに見えていながらとても頑丈そうな小さな家が、里の隅の村に建てられていた。曰く、ユヅルの父、いとめヤジリは雲からの移民であり、彼の家には父と妹しかいないのだ、という話だった。
「あんだよ? あんたのとーちゃん、こえーの?」
ぼろくさい家を見上げて、目に見えて入りたくなさそうな顔つきのユヅルにマナが問いかける。しかし孵ってきたのは、
「怖くはない、けどさあ。でも、ええと」
と濁りに濁った返答でしかなかった。
はじめはいない。一文字家にて、嫡子であるはじめが下忍になった祝いがあるそうだ。はじめは相変らず無感動な顔だったが、よくよく見ている内に、彼はあまり乗り気していないのだな、とわかった。
一族が滅んでいるマナは許可を取りにいかなくてもいい。火影が彼女の後見人だ、問うまでもないだろう。
じゃあアタシが聞くぞ、と前置きして、マナはいとめ家に向かって怒鳴った。
「誰かいますかー?」
「……何」
家に呼びかけたはずが、声が返ってきたのはその裏の畑からだった。ボンネットを被った少女が立っている。鋭い赤の瞳に、短く切った白い髪。ユヅルの姉ちゃんかな、と見当をつける。なんとなく、それっぽいと思った。
「失礼ですが、貴女は?」
「いとめヤバネ。悪かったね、大人じゃなくて」
「いや……そんなことは」
問いかけたハッカに、そっけない言葉で返す。不機嫌そうな顔には汗が滴り、右手には鋤を握っていた。両手には手袋、足には長靴を履いている。肌の垢を落として可愛らしい服をきたら、すごく美人になるんだろうなあと思わせる綺麗な顔だ。同時に、どこか異国の雰囲気を纏っている。
「入りなよ。一応客なんだしね。狭苦しい家だけど、どうぞ」
つっけんどんとした口調でそういわれ、ハッカは頭を下げて中に入った。ヤバネから隠れるようにして、ユヅルも中に入る。マナはヤバネをまじまじと見つめてから、中に入った。
家の中で横たわっていた男に、ヤバネが声をかけた。
「父ちゃん、お客さんだよ」
むっくりと体を起こしたやせこけた男は白い髪を掻き揚げ、じろっとユヅルを見て、それからまたじろっと黒い目でハッカを見た。雲の人間らしい浅黒い肌の男は礼儀正しく正座して頭を下げたハッカを一瞥し、なんだ、
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