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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十話 フェザーン謀略戦(その2)
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な、ヴァレンシュタイン中将。訓練ではなかったのかね」
「近くまで来たので表敬訪問ですよ、自治領主閣下」

俺の動向は調べてあるという事か。まあ当然だろうな。となればこっちの狙いもある程度は察しているだろう、フェザーンの独立、そんなところか……。さて、どうなるかな。とりあえず、俺も座らせてもらおう。ルビンスキーにだけ楽をさせておく必要は無い。ルビンスキーの正面の椅子に腰を下ろすのとイヤホンから声が流れるのが同時だった。

『レムシャイド伯が到着しました。護衛は十人、今建物に入ります』
「了解」
ヴィオラ大佐が答えながら視線を皆に向けた。皆がそれぞれの表情で頷く。サアヤが多少緊張しているがローゼンリッターは不敵な笑みを浮かべていた。

「小官が出迎えに行きましょう」
シェーンコップがドアの外に向かう。ルビンスキーが微かに眉を寄せた。どうやらレムシャイド伯が来るのを察したらしい。伯がここに来るまであと三分程か。レムシャイド伯、大分急いできたようだが飛んで火に入る夏の虫だな。狐はもう少し用心深い動物なんだが……。

「改めて御挨拶を。自由惑星同盟軍中将、エーリッヒ・ヴァレンシュタインです」
「フェザーン自治領主、アドリアン・ルビンスキーだ。それで、何の用だね、ヴァレンシュタイン中将」

低く渋い声だ。声だけなら好感が持てるな。何となくシトレの事を思った。
「随分と余裕ですね、驚くそぶりも慌てるそぶりも無い。私を危険だとは思わないのですか」
「思わない、私は君を高く評価している。私に危害を加える様な事は無いだろうし、殺す事も無いだろう。何の用だね」

思わず苦笑が出た。ルビンスキーの俺に対する危険度評価はゼロのようだ。随分と舐めてくれる。手をポケットに入れた、ゼッフル粒子の発生装置の冷たい感触が気持ち良かった。

「確かに自治領主閣下を殺す事は有りません。でも殺す意思が無いからといって危険がないとは限りませんよ」
「なるほど、確かにそうだ」
ルビンスキーは落ち着いているし楽しげでもある。俺も楽しくなった、こいつの顔色が変るところが見られるはずだ。腹の皮が捩れるほど笑えるだろう。

「もう少し待ちましょう。話は一度で済ませたい」
「レムシャイド伯かね。良いだろう、彼を待とうか」
お互いにこにこしながらレムシャイド伯を待った。皆が呆れた様な表情をしている。その事がまた楽しかった。楽しいよな、ルビンスキー。

それほど待つこともなくドアが開きシェーンコップが両手を上げて入ってきた。その後から帝国軍の軍服を着た男達がぞろぞろと十人ほど入って来る。全員銃を構えている。“手を上げろ”、“抵抗しても無駄だ”などと言いながら銃を向けてくる。シェーンコップが俺を見て片目を瞑った。迎えに行くって、これかよ……、困った奴。


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