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蘇生してチート手に入れたのに執事になりました
無謀
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情報を守備するレベルであろうセキュリティシステムを護るファイアオールは、麗でも、何も知らなければハッキングなど不可能に近い。一生かかっても無理だろう。
だとしたら、彼らに情報を流した神条財閥側の内通者がいる、と考えるしかない。
しかし、今の麗にとってそんなことどうでもよかった。
今は護らなければ、明を、SPたちを。
その二つは、彼から託された唯一無二のものだ。それを護れなければ、自分は・・・・自分は・・・・・。
そっと顔にかかった少しクセのある茶髪をどける。
コンプレックスだったクセっ毛。それを彼は逆に私を好きな理由といってくれた。
そんな優しい彼は、優しかった彼は。
もう、この世界にはいない。
神条明は動かない。
既に宏助と麗が出て行ってから三十分が経過した。机を挟んだ向かい側にはモノをいわないロボットが座っている。
明はこう考えていた。
SP達の身柄が安全となるならば自分の身柄のことは別に構わない。しかし、何故だか相手が問答無用で即刻明の身柄を確保するのではなく、一時間半という猶予を与えたのは謎だが、それを無為なものにすることはない。
一時間半の間になにが起こるか分からない。だから明はただひたすら待っている。そのなにかが起こるのを。
正直、怖かった。相手に身柄を引き渡した場合、自分はどうなるのか分からない。しかし、SP達の命が懸かっている。自分の命を護る彼らは私の為にここにいるのだ。私がいなければ、今はこうなっていない。だから、そんな恐怖に耐えていた。
なにより、SP達を護るのは五年前に死んだ『彼』の頼みごとでもある。絶対にそれを破る訳にはいけない。
麗は、目が虚ろになっていたが、当たり前だろう。彼女は、彼女は、ここまで『彼』の言いつけを護るために、私と、SPである彼ら、彼女らを護るために、強くなったのだ。努力してきたのだ。
今回のこの件はその彼女の思いを水の泡にするような出来事だ。彼女の思いを、今現在の思いを想像すると胸が痛む。
明は想起する。あの事件を。麗がまだ自分の傍にいなかった頃に起きた、悲痛な事件。彼女がまだ、世間一般で言う『青春』なるものを過ごしていた時代。まだ若いのに麗がもう恋人を探すことをやめ、大人っぽく、どこか奥ゆかしい魅力を携えている理由。
明はその事件を思い出すたびにまた胸が痛む。私がいなければ、あの事件は起こらなかった。
麗の恋人が、私を庇って殺されるなんて事件、起こらなかった。
 ふっ、と急に意識が戻る。どうやらいつの間にか寝ていたらしい。目の前にはすっかり冷めたコーヒーがある。
顔には水滴がついていて、机にも何滴か垂れていた。顔についた目元から零れている水滴を拭い、ファミレスにある時計を見る。
残り時間は・・・・・三十分。宏助がここに来てから既に一時間が経過していた。
宏助はも
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