第二話
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知らなかったというのはただの言い訳だろう。
ニーナから……ハーレイも含めたニーナ達からの手紙はグレンダンにいるレイフォンの元へと確かに届いていた。だが、それを読まないことを選んだのはレイフォン自身だ。敢えて遠ざけた。
シュナイバルでの日々は楽しかったと言える思い出だ。金の事しか考えず先を見ずに飛び込んだ先で彼らに出会えたことは幸運だと言えるだろう。
ニーナ・アントークは裕福な少女だった。世間一般で言うところの不自由などというものから縁遠い環境に置かれていた。武芸者として持つべき律を胸に有したお堅い所もあったが猪突猛進で意外に我が儘な、どこか抜けたところもある強い意志を持つ少女だった。
そして何よりも年相応――と言うべきなのだろう――に自分の思いに迷いを持ち、外への憧れを持っていた。打算なく、曇りなく、真っ直ぐな憧れを語るその姿にレイフォンは羨望の思いを抱きさえした。そんな少女の歩みに自分が関われ、そして少女からの再会を願われた約束が嬉しく、自分もそうなれたらとさえ思った。
だから、なのだろう。
彼女が賞賛してくれた武を汚し、罪を弾劾された自分にはその手紙を見る資格がないとレイフォンが思ったのは。守りたかった兄弟からさえも侮蔑の目を向けられた自分と、家族を振り切ってまで意志を貫いたニーナとの現実から目を背けた。
何にせよレイフォンはニーナ達からの手紙を一度として開けなかった。開けていれば彼女たちが此処に居ることも知っていただろう。逃げるようにツェルニではない方の学園都市を選んでいただろう。
だが現実は逃げるものを追って来た。逃げ道を封じ、あの日別れた続きを要求する。
今日再び、レイフォンはニーナと出会った。
出会ってしまえば逃げられない。現状を受け入れるしかなければ意外に受け入れられるものだ。レイフォンはそこまで心を揺らすことなく久方ぶりのニーナの姿を瞳に移す。
大凡二年ぶりのニーナはレイフォンの記憶の中の姿よりも大人びていた。声こそろくに変わっていないものの背は高くなり手足はスラリと伸び、相貌もどこか丸みのある少女からアカが抜け凛としたモノになっている。
一体どんな変化を覚えたのかレイフォンは不思議だった。美人なのは変わらないのだが可愛らしさや可憐さというよりかっこよさの方に明らかにポテンシャルが伸びていた。レイフォンの記憶の大部分を占めるニーナは長髪なのでそのイメージとのギャップなのかもしれない。
取り敢えず久方ぶりに会った知人へ定番として「かっこよくなりましたね」と言うべきか否かレイフォンは悩む。
そんなレイフォンのどことなく失礼な思いを知らず、フェリを背負ったままのニーナは嬉しげな笑顔を浮かべる。
「本当に久しぶりだな。二年ぶりといったところか。また会え
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