外伝
外伝1:フェイト編
第12話:そして廃工場へ
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とってその主張は全身全霊をかけた魂からの叫びだった。
僅かでも現状を好転させることができれば・・・。
そんな藁にもすがるような期待を込めた主張は、本局と中央の冷笑という形で
無残にはねつけられた。
思えばその時だったであろうか。
男が"たとえ法を犯してでも地上の平和は守る"という悲壮な決意を持ったのは。
優秀な魔導師の代替としての魔道機械と生物兵器。
その開発に秘密裏に着手して以降、男にのしかかるものは重くなる一方である。
自分が"罪を犯している"という意識はある。
だが、その罪の意識を"地上を守る"という義務感が押し流していく。
『閣下』
男の前に眼鏡をかけたやせ形の男が映る通信ウィンドウが現れる。
突然現れた通信ウィンドウであったが、男を驚かせるには不足であった。
「どうした?」
その低い声は冷静そのものであった。
『件の次元航行艦がエメロード博士の捕縛作戦を開始したようです』
「そうか・・・」
男の薄い反応に画面の中の男は何度か目を瞬かせる。
『よろしいのですか?』
「なにがだ?」
『博士の研究がここで中断すれば、生物兵器計画はとん挫しますが・・・』
「やむを得んよ。 それに魔道機械と戦闘機人の方は順調だ」
『閣下がそうお思いならいいのですが・・・。そういえば!』
「どうした?」
『ポー1佐の処遇はどうなさいますか?』
画面の中の男に問われ、男は一瞬目を窓の外に走らせた。
「決まっているだろう。 わざわざ言わせるな」
『・・・かしこまりました』
眼鏡の男は恭しく頭を下げると通信を切った。
再び静寂が戻った部屋で男は椅子から立ち上がり、窓の側へと歩く。
「俺はいつからこうなったんだろうな・・・、なあゼスト」
男はそう呟くと、自嘲めいた笑みを浮かべた。
スポーツ施設を出て5分後。
ゲオルグ率いるB分隊は廃工場とは通りを挟んだ反対側にある路地に
集結していた。
先頭、すなわち廃工場に面した通りとの角地に膝をついて屈み、
廃工場の門の様子を覗っていたゲオルグの耳に、通信音声が届く。
『B01応答せよ』
その声に対してゲオルグは首を伸ばして廃工場の方を見ながら答える。
「A01、どうしました?」
『A分隊は予定通りの配置を完了。 そっちはどうだ?』
B分隊の状況を問うてくるヒルベルトに対し、ゲオルグは冷静に応えを返す。
「B分隊も配置完了です。いつでも、計画の通り突入できます」
今回の作戦におけるA分隊の役割は、B分隊の突入を援護である。
そのため、ヒルベルト率いるA分隊は廃工場の正面にあるビルの屋上で
待機している。
『了解した。
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