暁 〜小説投稿サイト〜
悪霊と付き合って3年が経ったので結婚を考えてます
1年目

春A〜「それ」は「彼女」〜
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ると背中には包丁が突き刺さっている。だが、その仕草や口からあふれ出る言葉の数々は、そこらへんにいる女の子と変わりない。いや、むしろ最近の女の子より感情豊かではないだろうか。
 ここまでくればどうにでもなれ、と、俺は「それ」に話しかける。

「あ、あの…、佐藤さん、でしたよね……? ど、どうしてこの部屋にいらっしゃるのでしょう……?」

「あぁ、私?25年前にここで殺されたのよ。自縛霊(じばくれい)、ってやつ? しかも、まだその犯人捕まってないらしいのよねぇ。物騒な世の中だわ。」

 そんなことをいいながらも、「それ」はまだオムライスを頬張っている。

 殺された……? 殺人事件じゃないか。
それに、まだ犯人は捕まっていないって……。
 サーっと血の気が引き、背筋が凍る。

「それと佐藤さん、なんて他人行儀に呼ばなくていいわよ。さちでいいわ。これから一緒に住むんだし。」

「あ、そ、そうですよね……。ん? 一緒に暮らす……?」

―――え、…えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?

「何をそんなに驚いてるのよ。自縛霊、って言ったでしょう?私動きたくてもこの部屋から動けないのよ。」

 そうだった。
自縛霊となれば、部屋に憑いてるのと変わらない。
食べ終わって満腹になれば居なくなってくれる。どこかそう期待していた俺は落胆してしまった。

「このことは…、あなたがここにいるってことは大家さんは知ってるんですか…?」

「あー、まぁ知ってるんじゃない……? 幽霊部屋、って言われてこの辺じゃ有名みたいだし。時々近所の子供が肝試しに来たりして困ってるのよねぇ……。“誰かいますかー?”なんて聞いてくるから“はーい”って返事したら怖がって帰っちゃうし。私にどうしろってのよ!」

 それは誰でも怖がるだろう、と少し呆れてしまった。

 そして、幽霊部屋と噂されるせいで家賃も異様に安かったんだな、と納得する。
だが、幽霊と共同生活など俺は考えたくもなかった。

「ごちそうさま!」

「それ」はどこか満足げな顔でそう言うと、先ほどまで大盛りだったはずのお皿に向けて手を合わせた。

「それにしてもあなた、料理上手ね! こんなおいしいオムライス久々に食べたわ! これからこの料理が食べれると思うと楽しみねぇ!」

 それから間を開けず、あ……、と、声を零したかと思うと、「それ」は急に口を(つぐ)んだ。そして、前髪で隠れた顔が少し寂しそうになった。……気がする。

「あなたが考えていることはわかる……。“幽霊と同居なんて嫌だ”、でしょ……?」

 その言葉にドキッとしてしまう。まるで心を覗かれたようだったからだ。

「今までの人だってそうだった。そりゃね、私は悪霊だし。感情が揺らげばお皿も音を立てるし、宙を舞
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