暁 〜小説投稿サイト〜
悪霊と付き合って3年が経ったので結婚を考えてます
1年目

春@〜夢と幽霊とオムライス〜
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い。だが、わかってはいたとは言いえ、駅に近くなればなるほど家賃も跳ね上がるのが道理である。

 なんでこんなに高いんだよ。うちの田舎ならこの値段でお米何キロ買えると思ってるんだ……。
ブツブツと独り言を呟くが、その言葉も公園で遊ぶ子供たちの声に飲みこまれていく。そのうちの一人と目が合い、軽く手を振ってみたが、その子供は怯えたように目線を外すとそそくさと逃げてしまった。

 こんな髪に、80年代のロックっぽいという理由で買った真っ黒なジャケット、そして極めつけは生まれつきの鋭い目つき。
そりゃ子供は怖がるだろうな。
少しだけショックを受けて俺はため息を漏らす。

 そんな時、公園からすぐ目の前に不動産屋があるのを見つけた。

ここまで来たし、せっかくだから見ておくか。

 よいしょ、とオッサンくさい言葉とともにベンチから立ち上がる。そして、少しだけ残っていたコーヒーを飲み干すと、やったこともないバスケの構えをして空き缶をごみ箱へと放り投げた。空き缶は綺麗な放物線を描き、カラン、という音と共にごみ箱へと吸い込まれる。

 その見事なまでのシュートについガッツポーズを取ってしまったが、急に恥ずかしくなり、誰にも見られてないかとキョロキョロ周りを見渡してしまう。
 なにはともあれ、先ほどの落胆からも立ち直って、なんだかいいことありそうだな、と浮かれ足で不動産屋へと足を向けた。

 そして、その思いはすぐに現実となった。

“格安物件!駅まで徒歩3分!敷金礼金一切頂きません!リフォーム済み!台所は人気のオール電化!”

……これだ。

 俺は少しでもお金を節約したかったこともあり、即行この部屋に決めた。もう何件も不動産を歩いた経験から、これより良い条件の物件なんてないとわかりきっていたからだ。決めたとなれば即行動が俺の理念。不動産屋の仕事に就いて日が浅いのか、固い愛想笑いを張り付かせたままの付添人と部屋の見学をしたのだが、綺麗にリフォームもされており築30年という古さは感じられない。

 だが、これはよく聞く話。

 安い部屋には色々といわくがあるものだ。
雨漏り、水漏れ、はたまた、幽霊が出ると噂の部屋だったり…。

 あいにく俺は今の今まで幽霊の「ゆ」の字すら縁はない。
雨漏りだけは困るが、それはないという男の言葉に頷いてみせ、それならば安心だ、と俺は意気揚々と契約書に判を捺した。








 そんなこんなで迎えた引っ越しの日。
荷物の運びいれは昼のうちに滞りなく終わったが、生活に必要なものをそろえているうちに太陽は沈んでしまっていた。部屋の窓からは電気が切れかかった街頭の点滅が目に入る。

俺は一息つこうと、一日中ポケットに入れていたせいでくしゃくしゃになってしまった煙
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