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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十話 誠心誠意嘘を吐く
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る。しかる後、希望者は自らの意思をもって軍に復帰せよ。全員一階級を昇進させる。また退役を希望する者も一階級昇進させたうえで退役させる事を約束する』
「やれやれだ、こっちとはえらい違いですね」
「そうだな」
トリューニヒト議長が戻ってきた兵士達を迎える時に行った演説は同盟政府の人道主義と外交政策の成果の自画自賛と兵士達に戦場への復帰を命じる物だった。

『私、帝国軍最高司令官ヴァレンシュタイン元帥も貴方達に感謝し、かつ詫びなければならない。これまで兵士として帝国のために戦い、捕虜としての境遇に耐えられた事に心から感謝と敬意を送る。そしてこれまで貴方達を救出する事無く無為に過ごしてきた事を愧じ衷心から謝罪する。兵士諸君、どうか、これを受け入れて欲しい』
ヴァレンシュタイン元帥が頭を下げた。ラウンジの彼方此方でどよめきが起きた。帝国最大の権力者が頭を下げている。驚いているのだろう。

「本心かな?」
「さあ、……しかし演技ならまさに宇宙随一の名優ですね、完璧ですよ。何処かの誰かとはえらい違いだ」
「おいおい、後半は余計だぞ。……まあ同感だがな」
俺がヤンを窘めるとヤンは頭を掻いて苦笑した。

『最後に一言言わせて貰いたい。私は自由惑星同盟政府の対応に強い憤りを覚えざるを得ない。彼らは不実にも捕虜交換の約束を破り帝国の内乱に付け込もうと出兵した。幸いその邪な野心は我が軍によって打ち破られたが彼らは帝国との約定を破り帝国内に居る捕虜を、そして同盟領内に居る捕虜を見捨てたのだ』
ざわめきが消えた、ラウンジが静まり返った。

『両国の捕虜達は見捨てられた、捕虜交換の約定は同盟政府によって破棄された……』
ヴァレンシュタイン元帥が俯いた。そして顔を上げた。
『帝国に非は無い。しかし帰国という希望を奪われた多くの捕虜達の呻吟、そして残された家族の悲しみを思えば捕虜交換を打ち捨てるのは余りにも非人道的な行為であり無情でもある』
今度は首を横に振っている。

『非は同盟にある。だが私は帝国宰相としてイゼルローン要塞に使者を送り同盟政府に対して捕虜交換を申し入れた。当方の条件は唯一つ、同盟政府の謝罪、私が要求したのはそれだけである。ただ一言、あれは過ちだったと謝罪してもらえれば良かった。だが彼らはそれを拒否したのだ。過ちを認めることを拒否し、そして交渉は打ち切られた。何という傲慢! 何という不実! 何という無情! これが同盟市民によって選ばれた政府のする事なのか、彼らは自らの手で同胞を切り捨てたのだ……』
ヴァレンシュタイン元帥の目から涙が一筋落ちた、また一筋……。

『もはや同盟政府は信じるに値せず。私は同盟政府ではなく同盟軍に対して捕虜交換を打診した。そして同盟軍は人道をもって捕虜交換に応じてくれた。私はその事に心からの感謝を表し
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