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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十話 誠心誠意嘘を吐く
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は出来ませんな。……政府に了承を取る必要が有ると思いますが」
『そうですな、直ぐ取りましょう、暫くお待ちください』

通信が切れたが十分ほどで今度はクブルスリー本部長から通信が入った。
『アイランズ国防委員長と話しました。条件が無いのが事実なら問題は無いそうです。捕虜交換は軍に任せるとの事でした』
「ではこれから交渉に入る事にしましょう」
『宜しくお願いします』



宇宙暦798年 3月 1日  ハイネセン  宇宙艦隊司令部  アレックス・キャゼルヌ



宇宙艦隊司令部のラウンジは人が少なかった。しかし何処となく浮き立つような空気が有る。俺とヤンはラウンジでお茶を飲みながら話していた。
「トリューニヒト議長だが最近上機嫌らしいな、よくTVにも出てる」
「そうらしいですね、捕虜交換も終わって支持率も上昇しましたから……」
「そうだな」

「例の政府間交渉だが何を話したと思う?」
「さあ何でしょう。ただ政府の発表ではあの時点で交渉を妥結しなかった事が今回の無条件の捕虜交換に繋がったと言っていますが……」
「自画自賛、と取れなくもないな」
「ええ」
二人で顔を見合わせた。俺が肩を竦めるとヤンは軽く笑った。

昨年の内乱に付け込んだ出兵が失敗に終わった事でトリューニヒト政権の支持率は一時、危険な程に下落した。しかし今年になって捕虜交換が行われた事でトリューニヒト政権の支持率は上昇した。今では昨年の出兵を非難する声は何処からも聞こえない。結果良ければ全て良し、そういう事らしい。ラウンジの時計が午後二時を指した。

「そろそろかな」
「そうですね」
ラウンジに置いてある巨大スクリーンに黒髪の若い男が映った。ラウンジの彼方此方で声が上がる。帝国軍最高司令官、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン元帥……。今日、この時間に彼が広域通信で映像を流すと何度か帝国から放送が有った。メディアはイゼルローン要塞方面に通信の中継艦を送って放送している様だ。皆、彼を見る事を楽しみにしている。一体どんな男なのか、何を話すのか……。

『勇戦虚しく敵中にとらわれた忠実なる兵士達よ、私は貴方達に約束する。捕虜となったことを罪とし、それを責めるが如き愚かな慣習はこれを全面的に廃止するものである』
彼方此方でざわめきが起きた。声は男性にしては高めだが柔らかい感じがする。それに容貌は誠実そうで穏やかでもある。“意外だな”というとヤンも“ええ”と頷いた。

『貴方達に恥じるべき物は何も無い。恥じるべきは貴方達を前線に駆り立て、降伏もやむなき窮状に追い込んだ旧軍指導者達である。貴方達は胸を張って堂々と帰国せよ。帝国は貴方達を英雄として迎えその労に報いるであろう。帝国は貴方達にその事を約束する』

『帰国した貴方達全員に一時金と休暇を与え
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