第15話 今度は黒き死神が相手だそうですよ?
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「それでは皆さん。またお会い致しましょう」
何処か遠く……。まるで別の世界から。深淵の向こう側からバンダナの青年の声が聞こえて来る。
しかし、今はそんな事は些細な問題。この目の前の相手を如何にかして封じなければ、この場に居る全員に明日が訪れる事は無くなる。
そう美月に感じられるほど、その黒い影は危険な死の雰囲気を纏った存在であった。
何時の間にか雨は止んで居た。
……いや、厳密に言うとそれは違う。先ほどまで確かに蒼穹に存在していた低く立ち込める雨雲の姿が消えているのは間違いない。そもそも、その見上げた先に本来存在するはずの蒼い空さえ存在しなく成って居たのだ。
現在、その現実世界の蒼穹が有るべき場所に存在していたのは……、
有りとあらゆる色彩の絵の具を集め、それを三回ほど軽くかき混ぜた後、其処に数滴の水を垂らしたような色合い蒼穹。
ここは現実界……。美月たちが暮らして居た世界とは位相をずらした異界。何時の間にか、美月たちは異界化した世界に呑み込まれて居たのだ。
黒い影が口を開いた。その瞬間、蒼穹が震え、大地が揺れる。可聴域を超えた声が、しかし、身体すべてで感じる事が出来る力をたぎらせて空間自体を歪ませた。
そしてその瞬間!
轟と吹き荒れる風が周囲に有る物すべてを吹き飛ばして仕舞った。
大地が裂け、それに気を取られた美月が軽々と宙を舞った。
これは、彼女自らが意図して飛んだ訳ではない。まして、この体勢では次の瞬間、美月は大地に打ち付けられ――――
しかし!
「大丈夫か、美月」
神力の直撃に意識が霞み、受け身さえ取る事が出来ずにそのまま地面に打ち付けられるかに見えた正にその瞬間、美月の身体が体重の無い者のように一瞬浮き上がり、そっと大地に降ろされる。
かなり無様……少女が座る時のように膝を曲げ、おしりを両足の間に落とした姿ながらもまったくの無傷で、少し茫洋とした表情で声を掛けて来た小さき友人に対して視線を送る美月。
そう。虎族のタマに取って風を支配するのは呼吸をするに等しい事。
「ありがとうね、タマちゃん」
ゆっくり立ち上がり、両足の感覚を確かめながら美月は、自らの小さき友人に対してそう答える。
大丈夫。ふらつく事もなければ何処かを痛めた様子もない。大地をしっかりと両足で踏みしめ、今度は簡単に吹き飛ばされないように気を籠めたのだった。
そして、自らの確認の後、少し頭を振りながら、周囲の確認を行う。
その周囲の状況は……。
こちらも問題なし。自らとタマ以外は、先ほどと変わらぬ位置に存在する。
そう。凶悪な神力の直撃で吹き飛ばされたのはタマと美月のみ。あれ程の敵意をむき出した神力を真正面から受け止めながらも
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