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魔狼の咆哮
第一章その五
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「特に『聖闘士星矢』と『ベルサイユの薔薇』が好きです」
「あ、いいですね。両方共アニメのほうの作画は同じ人なんですよね」
「本郷君何故そんなことまで知っているんだ」
 顔をぱっと明るくさせ楽しそうに話す本郷に役が突っ込みを入れる。
「やっぱり格好いいですよね、あの闘いが。そして我が国のあの動乱の時代をあれ程まで美しく描いて下さる日本の方がおられるということに感銘を受けました」
 前を向きながらであるが巡査長の声はいかにも楽しそうであった。よく見るとミラーから喜色満面の顔が映っている。警部はやれやれ、といったふうに苦笑いをしている。
「そしてキョートとはどんな都市ですか?」
「キョートですか。一言で言うと」
 本郷は少しもったいぶって話した。
「一言で言うと?」
 巡査長が本郷の言葉をそのまま繰り返して尋ねた。
「お寺とお坊さんの街ですね」
「お坊さん!?」
「はい。あと舞妓さんと時代劇の街」
「舞妓さんに・・・時代劇ですか!?」
「はい」
 本郷はあれっ、と思った。舞妓はともかく時代劇なぞ他の国の人間がそうそう知っているものではないと思っていたからだ。
「実は私時代劇が大好きでして。ある知人からビデオを取り寄せてもらっていつも見ているんですよ」
「へえ、面白い知人がおられますね」
 また凄いマニアックな人もいるものだと内心思った。
「『水戸黄門』も『長七郎江戸日記』も『隠密同心』も『鞍馬天狗』も全部見ましたよ。特に『暴れん坊将軍』と『遠山の金さん』は名作ですよね」
 巡査長は更に饒舌になった。
「東映のあの演出は最高です。悪役が高笑いを浮かべた後成敗されるのを見ると胸がすうっとしますよね」
「え、ええまあ」
 流石に本郷も役も少し引いた。ここまで来ると趣味とか造詣が深いとかいう言葉の域ではない。当の東映の人達も驚くだろう。
「あとジャパニーズオペラですよね、カブキ。私はあれも好きです」
「そ、そうですか」
 最早巡査長の独壇場だった。普通の日本人ですら遥かに及ばない巡査長の日本のアニメや時代劇に関する知識を聞くうちに目的地の村へ到着した。
 その村は本郷達が最初に来た村と同じく緑に囲まれた静かな村だった。田園が広がり水車がさらさらと音を立て回るその側を子牛や子羊が草を食べている。小川には魚が泳ぎ葡萄畑には濃紫の葡萄がたわわに実っている。
「美しくてそれでいて穏やかな雰囲気のある村ですね」
 辺りを見回しながら役が言った。
「そうでしょう、この辺りでもとりわけ風景が綺麗なので有名な村なんです」
 警部が二人を案内しながら言った。
「なんか感じいいですよね、本当に」
 本郷も歩きながら同意の言葉を述べた。
「来ることが出来てよかったですよ。ただ」
 顔に嫌悪の色を浮かび上がらせつつ言う
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