第九話
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「あ……が……」
女性のものとは思えない握力で、男の顔は締め付けられていく。あまりの出来事に、男は思考が定まらないまま、痛みから逃れようともがき続ける。
だが、妖怪相手に人間が太刀打ちできるわけがなかった。
「だからなんだっていうの? 私は花の妖怪……それくらい当たり前だと思わない?」
「ご……が……」
「ただの人間風情が……ここで死ぬ?」
「……」
ついに男はなんの抵抗もできなくなっていた。幽香に顔をつかまれたまま、ピクリとも動かない。
それを確認した幽香は、そのまま地面に思いっきりたたきつけた。手加減はしたようだが、重傷は間違いないだろう。
「さて……」
幽香は少女のすぐそばで、おびえた状態の男をにらむ。
あまりの威圧感に、男は尻餅をついて座り込んでしまった。体の筋肉が言うことをきかず、逃げることすらできない。
そんな男に、幽香はどんどんと近づいていく。
「ひっ!」
「大丈夫。あんたはただ罪を償うだけよ?」
「ゆっ許してくれ! 俺はそいつに脅されただけなんだ!! 計画にのらないと、家族に危害を加えるって!」
「へえ……でも……」
そう言いながら、幽香は男の前にしゃがみこむ。
「あなたが犯した罪に変わりはない」
「ひっ……!?」
そういった瞬間、男の体は中に浮かび上がる。いや、吹き飛ばされるといったほうがいいだろうか。そのまま、男の意識は薄れていく。
数十メートル吹き飛ばされた後、男は完全にのびたまま倒れていた。
「安心しなさい。私を罵倒した分はないから」
そう言った幽香は、不気味な笑みを浮かべていた。その後、あたりを見渡して誰もいないことを確認すると、日傘を差してゆっくりと少女に近寄っていた。
目の前の惨劇を見た少女は、完全におびえきっていた。ただ、恐怖心にによってその場から動けそうにない。
そのまま少女の前に立った幽香は、かがんだあとさっきと違う笑みを浮かべて話しかけた。
「大丈夫よ。あなたにはなにもしない。何も悪いことしてないものね?」
「……」
(さすがにやりすぎたかしら……)
さすがにあれだけのことがあったのだ。まだ幼い少女にとっては、状況を飲み込むにしては荷が重すぎる。
そんな彼女に幽香は右手を差し出すと、あるものを咲かせ始めた。
「あ……」
右手に出来上がったのは、小さな手のりサイズの黄色い向日葵だった。幽香はそれを手に取ると、スッと少女に差し出す。
少女はさっきまでのこわばった表情を緩ませると、無言で向日葵を受け取った。
「……ありがとう」
「お礼を言えるのはいい子の
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