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魔狼の咆哮
第二章その十二
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のだ。
「うおお・・・・・・っ!」
 切り落とされた腕の切り口を押さえアンリがしゃがみ込む。右手は床に落ちた。宙を舞いながら炎は闇夜の中に消えていた。
「これで炎は使えないな」
「貴様、これを狙って・・・・・・」
 アンリの顔に憤怒と恥辱、そして憎悪の色が湧き出る。それに対しカレーは普段と変わらぬ感情の無い声で言った。
「そうだ。貴に隙を作らせる為あえてバランスを崩したのだ」
 そう言いつつ左手をゆっくりと胸の前に旋回させる。氷の蒼い刃が消えていく。
「貴様の眼が言っていた。私を殺したい、殺したい、とな。激しい憎悪だった。ならばその憎悪を利用してやろうと思ったのだ」
「ぐううう・・・・・・」
 激しくカレーを睨みつける。両眼のその憎悪の色ガ更に強まっていく。
「さて、勝負は着いた。貴様は私に負けた。敗者ならば潔く自害しろ。カレー家の者ならな」
「・・・・・・ほざけ、俺はまだ負けてはおらん」
 地の底から響き渡る様な声を絞り出してきた。
「今は貴様の姦計に陥れられただけだ。俺は決して貴様なぞに遅れは取らぬ」
 身を起こし屋根の端へ駆けていく。
「むううっ!?」
 五人が追う。だがアンリの方が速かった。
「ベルサイユに来い、その地で貴様等を皆冥府の魔犬の餌にしてやるわ!」
 そう言い残すと飛び降りた。後には暗闇と静寂だけが残された。

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