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魔狼の咆哮
第一章その二
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やふやだけど」
「間違いではないが充分な回答じゃないな」
 役が付け加えた。
「確かにドイツに多いが他の国にもある。例えば吸血鬼だが」
「スラブが元々のルーツでしたよね」
「そうだ。変身能力があるのは知っているね」
「ええ。蝙蝠とか霧とか」
「他にも多くのものに変身出来る。その中には狼もある」
「ふうん、そうなんですか。じゃあ吸血鬼と人狼ってなんか関係有るんですか?」
「元々人狼は吸血鬼の使い魔みたいな存在だったんだ。時代を経るにつれて関係は対等になっていったが」
「それ程格の高い化け物じゃなかったんだ」
「当初はね。しかし段々と力を着けてきた。例えば生命力」
「銀の弾丸じゃないと死なないってあれですね?」
「その通り」
 役は大きく頷いた。
 「神聖な属性を持つ銀でなければ倒れない、これは使い魔の能力ではない。高位に属する魔物の能力だ。そして知性。人間の時の知力がそのまま残っている。変身している間人間としての記憶を失っている場合もあるけどね。ただこの場合は悪しき属性の人狼ではない」
「問題は人としての記憶をそのまま維持している奴ですね」
「そう、この種は自らの意思で変身出来る。だから人を貪り食う。記憶を失う者は満月の影響で狼になるに過ぎない。身も心も完全に狼となる。狼はほとんど人は襲わない。精々家畜を狙う位だ」
「それに朝になったら人間に戻りますからね。こっちは無害ですね」
「結局狼に過ぎないからね。我が国の狐憑きや犬憑きと似たようなものだ」
「呪いとか遺伝とかそういったやつですか」
「これは問題無い。お払いをすれば済む。だが人としての記憶を維持している者は違う。厳密に言うと人ではない。闇の世界に巣食う正真正銘の魔物だ。人間の社会に潜り込み陰から付け狙い人を喰らう。魔物であるが故に神聖な物でしか倒せないのだ」
「俺達がこれから相手にするかも知れないのは」
「人狼だとしたら間違いなく魔物のほうだ。油断出来ないぞ」
 そうこう話をしているうちにこの村の事件の現場に到着した。十五歳の少女が殺された場所である。
「・・・ここか」
 村から少し離れた場所にある物置小屋の側であった。遺体は既に片付けられているが鮮血が残っていた。完全には拭き取る事が出来なかったらしい。そのことが事件の惨たらしさをよく現わしている。
「見たところ村からそんなに離れていませんね。子供達の絶好の遊び場ですよ。昼にしろ夜にしろ本当にこんなところで誰にも見つからず犯して食ってって出来たんですかね」
「それだね。どう思う?」
「うーーーん・・・・・・」
 本郷は腕を組んで考え込んだ。
「そうですね・・・」
 暫く考えた後口を開いた。
「まず一人になるのを見計らい後ろから襲い掛かる。そして猿轡か手かで口を塞ぎ喉笛を噛み千切って喋れなく
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