第二部 文化祭
第44話 ユイの正体
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「パパ、ママ、ありがとう。これでお別れです」
「嫌! そんなのいやよ!!」
明日奈は必死に叫んだ。
「これからじゃない!! これから、みんなで楽しく……仲良く暮らそうって……」
「暗闇の中……いつ果てるとも知れない長い苦しみの中で、パパとママの存在だけがわたしを繋ぎとめてくれた……」
ユイはまっすぐに明日奈を見つめた。その体を、かすかな光が包み始めた。
「ユイ、行くな!!」
和人がユイの手を握る。ユイの小さい指が、そっと和人の指を掴む。
「パパとママのそばにいると、みんなが笑顔になれた……。わたし、それがとっても嬉しかった。お願いです、これからも……みんなを助けて……喜びを分けてください……」
ユイの黒髪やワンピースが、その先端から朝露のように儚い光の粒子を撒き散らして消滅を始めた。ユイの笑顔がゆっくりと透き通っていく。重さが薄れていく。
「やだ! やだよ!! ユイちゃんがいないと、わたし笑えないよ!!」
溢れる光に包まれながら、ユイはにこりと笑った。消える寸前の手がそっと明日奈の頬を撫でた。
──ママ、わらって……。
明日奈の頭の中にかすかな声が響くと同時に、ひときわ眩く光が飛び散り、それが消えた時にはもう、明日奈の腕の中はからっぽだった。
「うわあああああ!!」
抑えようもなく声を上げながら、明日奈は膝を突いた。うずくまって、子供のように大声で泣いた。次々と地面にこぼれ、弾ける涙の粒が、ユイの残した光の欠片と混じり合い、消えていった。
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