第二部 文化祭
第44話 ユイの正体
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り、同じ感情、同じ人格、同じ容姿を持つ人工知能を神聖術によって作り、それを?ユイ?として育てよう、と。そのクローンがわたし──?Yui?です」
「で、でも……神聖術を使ったって、そんなことはできないでしょう?」
一歩踏み出て、言う。
「そんな神聖術を使える人なんていないもの。そうでしょ、キリト、君……」
明日奈はわななく唇で、懸命に言葉を紡いだ。
こんな、同じ人間としか思えない女の子が、クローンなんて。
あの笑顔は、どう見たって偽物なんかじゃない。作られたものなんかじゃない。この子はちゃんと、?ユイ?として生きてる──。
しかしユイは、小さく首を振った。
「この世界の管理者、?カーディナル?なら、その限りではありません」
「カーディナル……?」
「はい、桐ヶ谷さん。ご存知かと思われますが、この世界には二人の管理者がいます。1人は世界の秩序を守る、?セントラル・カセドラル?の?アドミニストレータ?。そしてもう1人が、世界のバランスを司る?カーディナル?です。わたしはその?カーディナル?によって形作られた、?ユイ?のクローンです。──わたしは、普通の人間ではないのです」
明日奈は驚愕のあまり息を呑んだ。言われたことを即座に理解できない。
「じゃあ、ユイちゃんは……」
掠れた声で言う。ユイは、悲しそうな笑顔のままこくりと頷いた。
「わたしの感情は、すべてオリジナルの?ユイ?のコピーです。──偽物なんです、全部……この涙も……。ごめんなさい、結城さん……」
ユイの両目から、ぽろぽろと涙がこぼれ、光の粒子となって蒸発した。明日奈はそっと一歩ユイに歩み寄った。手を差し伸べるが、ユイはかすかに首を振る。明日奈の抱擁を受ける資格などないのだ──というように。
「……わたしは、?ユイ?として生きてきました。しかし、ちょうど9歳になった頃──オリジナルの?わたし?が死んだ年齢に達した頃、史上最大の世界大戦が起こりました。──その戦争で、?わたし?の家族はみんな死んでしまった」
明日奈の隣で、和人がギリッと歯を食い縛る音が聞こえた。強く握られた和人の拳は、小刻みに震えている。
「家族がみんないなくなってしまった。ならもう、わたしの存在意義はありません。──クローンは、存在意義がなくなった時、本当ならこの世界のどこからも消え去るはずだったのですが……わたしは消えなかった。何年過ぎても、わたしが消えることはなかった。なのに、本来存在しないはずのものであるわたしは、外見的成長をすることもない。だから、この命が尽きることもなくなった……。無為に流れ行く時間の中で、わたしの精神は崩壊していきました……」
しんとした部屋の中に、銀糸を震わせるようなユイのか細い声が流れる。明日奈と和人
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