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悪魔は避けて通れ
第5話

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木の上[翼]

 それは人だった。木の上で昼寝を楽しんでいた時、下から音が聞こえたかと思うと、次の瞬間それは俺の目の前まで飛び上がって来た。制服からして初等部だが、年は離れていないと思う。生憎、相手は俺に気付いてないみたいで、木の間から辺りを見渡している。別に気付いてないならそれはそれでいいと思った。気づいたらそれでいいし、気づかないならそれで終わり。そういえば、美咲が特力系に新しい子が来るから歓迎会するって。たしか歓迎会は…今日だ。忘れてたな。そのときうっかり物音を立ててしまった。まぁ仕方ないか、そろそろ教室に行かないと美咲にどやされそうだ。俺は振り返った少女に声をかけた。

木の上[咲月]

 振り向くと中等部の制服を着た少年がいた。全く気が付かなかった。多分年上だと思う。どうしていいか分からない。最近は分からないことだらけだ。完璧に目があっている状態では無かったことにはできそうもない。見つめあって数秒間、中等部の少年は突然笑いだした。何か付いているのかと思い、自分の身なりを確認した。
「違う違う。おかしなところはねーよ。」
「じゃあなんで。」
「全然こっちに気が付いてねーのに、気が付いたときの顔が。」
そう言ってまた笑う。ムカッとしたので木を揺らして落としてやった。いいきみ。


 中等部まで一緒に行くことになった。
「なんだ、迷子なら早く言えよな。」
「迷子じゃありません。」
この失礼な人は安藤翼先輩。年はひとつ上の先輩だ。それにしても制服はだらしないし、あくびばかりしている。とても年上には見えない。
「そういえば名前聞いてなかったな。」
「教えません。」
「なんでだよ。いーじゃん、減るもんじゃねーだろ。」
結局、翼先輩とは中等部の玄関で別れた。
「教室まで案内してやってもいいぞ。」
「結構です。」
「遠慮深いやつだな。」
またなと言って去って行った。さて、うるさい人もいなくなって、ナルミからもらった地図を頼りに教室に向かう。少し迷ったが、無事についたのでよしとする。ノックして入ると、破裂音が響いて目をつむった。頭の上に何かが乗ったのを感じて目を開けた。『ようこそ新入生』とかかれた幕とクラッカーを持った人達。そして私の頭にクラッカーをぶちまけたのは他でもない翼先輩だった。
「また会ったな。歓迎するぜ。」
翼先輩は笑った。



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