12話 黒木 七実side
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団結力、その言葉は本来ならまだしも、今となっては教師陣が纏まってどんな悪行を犯していたのだろうと、想像を掻き立てる言葉に成り下がっている。
『いじめはない』
ビクリとそれだけで何人かの教師が反応した。
『そんな事実はない』
『生徒がふざけているだけ』
『あんなのコミュニケーションの内だ』
『大人が必要以上に口を出せば、それこそいじめに発展する』
京介の淡々と語る内容は生徒の大半も心当たりのあるものだ。
特にそのなかでも、俺と五也と京介は嫌というほど知っていることだ。
『いやはや、本当に凄い団結力だこと。なにせ特に口裏を合わせるために会議をしたわけでもないのに、全員見事に事実を揉み消そうとするんだからねえ』
そう、いじめは実際にあった。
『あ、勘違いしてるかもしれないけど、俺は別に助けてもらえなかった復讐とかで、こんなことしてるわけじゃないから』
そして、いじめられていたのが京介だったということだ。
原因は京介の見た目にあった。
はっきり言って校内1の美少女なのだ。
なにがと聞かれれば、京介がとしか答えられない。
校内美少女コンテスト優勝、彼女にしたい人物トップ、被告白回数断トツ1位。こんな輝かしい数々の栄光も京介が男というだけで台無しだ。
まあ、それに悪ノリで出場させた俺も、出場した京介も問題があるけどな。
結果として、京介に男子より陰湿とされる女子のいじめが襲いかかったのだ。
『しかしまあ、大変でしたよね。一部の生徒が次々と病院送りになっていったんだから、先生方も揉み消すのが一苦労だったろうしねえ』
病院送りになった生徒、それは言うまでもなく京介に何らかの嫌がらせをした連中だ。
なかには嫌がらせで済まない様な過激なものもあったが、京介は常に鼻唄混じりに撃退し、犯人を突き止め報復をした。
『俺の親友に感謝しときなよ、あいつらが止めなかったら今頃病院送りが何倍になっていたかわからないんだからさ』
まあ、それと。と京介は会場を見渡す。
『見逃してやった連中もね』
射殺すような視線に貫かれた何人もが椅子から転げ落ち、けたたましい音を立てた。
その様子を見て満足したのか、京介は演台から飛び降りた。
『んじゃま、そういうことで! 形式上だけは感謝の言葉を贈っときまーっす!』
それを最後にマイクを捨てると、体育館中央に確保された卒業生全員で歩くはずの通路を、1人だけで堂々と歩く。
「黒木! 林道! さっさと帰るぞ!」
「そこで呼ぶか!?」
全員の目が俺に集中する。この空気のなか出てくとか何てムリゲー。
ガシャン、少し遠くからパイプ椅子が他のパイプ椅子にぶつかる
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