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魔狼の咆哮
第二章その三
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それはまるでべトコンの罠に落ちた米兵のようであったと検死官が報告しています」
「かなり凄そうですね」
「玄関以外から入って生きて帰ってきた者はおりません。あの家は一種の治外法権にあります」
「治外法権ですか。増々怪しいですね」
 本郷が不敵に笑った。
「?本郷さんまさか」
 警部と巡査長の顔色が変わった。
「いえ。あえて地獄に出向くような真似はしませんよ」
 本郷は右手の平を前に出して片目を悪戯っぽく閉じて否定した。
「そうですか、まさかあの家に忍び込もうと言い出すのではないかと思いましたよ」
「ははは、いくら俺でもそんなことはしませんよ」
 笑って再び否定した。
(今はね)
「・・・・・・・・・」
 そんな本郷を役は無言のまま横目で見ていた。
「まあカレー家とあの人狼の関係は決め付けるのは危険です。とりあえずは離していきましょう」
「ですね。下手にこちらから蜂の巣をつつく必要はない」
 役の提案に警部達も同意した。
「それでいいな、本郷君」
「まあいいですよ」
 内心舌打ちしたが面には出さない。だが役は目で語った。
(今は自重し給え)
(はい)
 本郷も目で答えた。
「では三日前の事件の現場に行きましょう。何かしらの証拠がまだ残されているかも知れません」
「はい」
 四人は部屋を出た。そして車中の人となった。
 事件の現場にはまだ多くの制服の警官達がいた。現場を中心にそれぞれ捜査にあたっている。
「物的証拠は全部持っていってますね」
 部屋を見回し本郷が言った。一面の血糊は今だ壁にこびりつきドス黒く染めている。
「はい。今科学班が捜査中です」
 巡査長が答えた。
「物的証拠への捜査から何かわかりましたか?」
 部屋を見回りつつ役が尋ねる。
「シーツに犯人の汗が付着していました。やはりあの野獣のものでした」
「やはり・・・」
「あとルーン文字が書かれた石ですが普通の石と何ら変わるところは無い様です。単に文字が書かれているに過ぎないと」
「でしょうね。ルーン文字の魔術は文字そのものに込められているのです。石は単なる器に過ぎません。ですがその石に今用が有ります」
 役の足が止まった。
「まだこちらに石はありますか?」
 警部達のほうを振り向いた。
「はい、一個だけなら」
 警部に言われ警官の一人がその石を持って来た。

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