第3話
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教室[棗]
新しい生徒がクラスに来た。年上の女。見た目は普通だがまとっている雰囲気が違った。俺達と同じような。黒猫の面越しにどんなアリスなのか警戒した。大抵のやつは自己紹介の時にアリスを明かすがこいつは違った。名前と年齢だけを書いて席についた。そして正田が女に突っかかる。女は何も話さなかった。それとも話せないのか。どちらにせよ、アリスを明かさなかった。宙吊りになった女は心読みができるやつを通して会話がしている。下ろせ、下ろさないの問答に疲れたのかため息をつくと
両手を口に持っていく。そして手のひらで何かを丸める動作をしたあと宙吊りをしている奴に向かって何かを投げた。すると見えない何かを避けられなかった坊主頭の子はドサッとその場に倒れ込んだ。
教室[咲月]
宙吊りにしている力が無くなったのか落ちる。うまく着地して顔をあげると、黒猫がこっちを睨んでいる。多分、こいつがこのクラスのボスなのだろう。めんどくさい。しゃべらないと決めていたがそう上手くはいかないものだと諦めて口を開く。
「アリス知りたいんでしょ?」
黒猫に向けて言う。
「私と同じで黙り?」
何も言わずにただずっと見ている。
「私の能力は言葉を操る言霊。これで満足?躾の悪い黒猫さん。」
からかうように言う。しかし黒猫は黙ったまま席を立つと金髪の男の子と教室を出ていってしまった。私も教室にいずらいので教室を後にした。
あとで分かったが黒猫は日向棗と言って黒い噂が絶えないんだとか。人殺しだとか、何とか。人殺しか。それなら私と同じの悪魔の手先というわけだ。
私は小さいころに両親をなくした。交通事故だった。同じ車に乗っていながら私だけが助かった。そのときから私のアリスは覚醒した。親戚の間を転々とし、アリスのせいでたくさんの人に気味悪がられてきた。そしてある時悪い人達が現れた。私を悪魔にした人達。私は能力を使って多くの人を傷つけた。取り返しのつかないほどの犠牲を払った。生きるために。自分の力では自分は殺せない。そう知ったのはついこの間のことだ。私は悪魔であり続けることが、悪魔として生きることがいやになった。でも死ねなかった。だから逃げた。寒い冬の中を捕まらないように逃げた。
そして今ここにいる。天使が与えてくれた場所。悪魔としてではなく金谷川咲月として生きていいと言われた気がした。
黒猫は避けて通れ。では悪魔はどうだろうか?
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