第四十二話 少年期【25】
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がらも、この1年間店番として頑張ってきた。店主さんと一緒に店の整理をしたり、奥さんと一緒に料理や掃除の手伝いをしていた。時々3人でご飯を食べる光景も見れ、そんな様子に俺も嬉しかった。エイカの昔を俺たちは知らない。だけど今のエイカなら、俺と店主さんたちはちゃんと知っている。
「……なぁ店主さん。後でちょっといい?」
「あぁ、いいぞ。俺もアル坊にちょっと用事がある」
考えることはどうやら同じだったらしい。店主さんと小声で話しながら、お互いの口元に笑みを浮かべた。
「こんにちは。すいません、予約していたイーリスです」
「おぉ、らっしゃい。家内は店の奥にいるから、そこで頼む」
「あっ、お姉さん」
あれから少し経ち、俺とエイカで店の棚の整理をしていた。ブーフは店内に興味を示したのか、徘徊しに行ったようだ。そこにちきゅうやの常連客のお姉さんが店に入ってきた。手には大きな包みのようなものを持っていて、結構な大荷物である。お姉さんは店の奥に荷物を置くと、俺たちの方に笑顔を見せてくれた。
「こんにちは、アルヴィン君、エイカちゃん」
「こんにちは。そうだ、お姉さんが作ってくれたバリアジャケットのデザインすごくよかったです。本当にありがとうございました」
「ふふ、私も気に入ってくれてよかったわ。袖の部分を日本の着物を意識して作ってみたんだけど、動かすのは大丈夫そうだった?」
「はい、大丈夫でした。ちょっと袖にゆとりがあるから、そこに物を隠したり、持ち運びもしやすいです」
「お前、その使い方はたぶん違うぞ」
お姉さんにもくすり、と笑われてしまったが、デザインは俺自身気に入っている。動きやすいし、かっこいいし。黒を基準にしたコートのようなものに藍色の模様が入っているのだ。この出来で趣味だと言うのだから、恐れ入る。確か、野球軍団のユニフォームもお姉さんの力作らしいし。
お姉さんはその後すぐに奥さんに呼ばれ、包みを持って店の奥へと姿を消してしまった。なんだか気合が入っているようだったけど、今日は何かあっただろうか。それに店の奥に行ったのが気になる。
「ん、彼女のことか? 彼女がさっき持っていたのは着物だ。家内は着物の着付けができるし、化粧や髪もできるからな。それで頼みに来たらしい」
「そういえば、奥さんのご先祖様も地球出身者だったって聞いた気がするし、なるほど」
「ふーん、着物って店に飾っている派手なやつだろ。それになんでわざわざそこまで?」
確かに着物を着るだけならお姉さんの趣味で納得できるけど、化粧までとなるとかなり本格的だ。
「あぁ、なんでもこれから見合いをするらしいぞ」
「「見合い!?」」
さすがにそれは驚いた。俺とエイカは声をそろえ、お姉さんが消えていった奥に自然と目を向け
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