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炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
十二章 「困惑」
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。まぁ、良いよ。なら君の眼で直接見ると良い」
 腕を持ち変えて、俺の向きを変えるフリアグネ。
 奴の腕を掴んでいた俺の腕は、情けない程あっさりと剥がされる。
「――――っ!?」
 信じられない光景が広がっていた。
 シャナは大太刀は俺ごとフリアグネを両断する事なく、寸前に刃を止めていたのだ。
 どうしたんだ、シャナ。
 ―――話が違うだろ。こういう展開も予想していた筈だ。
 だが、それは彼女とて同じなのからシャナは驚きと戸惑いを隠せないようだ。
「シャ―――ナ?」
 その瞬間、封絶で既に静止している空間に沈黙が流れる。
 その一瞬の間に、フリアグネは俺を連れて飛び上がった。
 グンッ、と視界が急上昇する。
「は―――はは、ははははは!!」
 狂った音程で笑うフリアグネ。
 この事態が奴にはたまらなく可笑しいようだ。
「ミステスと宝具を天秤にかけたつもりだったんだけどね、まさかフレイムヘイズが刃を止めるなんて。ははは! 可笑しくてたまらないよ!」
 刃を躊躇で止めていたシャナの顔には、色深い後悔があった。
 それは怒りよるものだろうか。
 あるいは自分自身への失望か。
 そんな事には興味もないのか、フリアグネはただ笑う。
「アラストールのフレイムヘイズ。まだ戦う気があるのなら、いや、ミステスが惜しいのなら、街の一番高い場所まで来るがいい。最高の舞台を用意して待っているよ!」
 俺は足をバタつかせ、腕を剥がそうとする。無駄なことだ。そんなことはさっきも試したじゃないか。
 第一、離れる事が出来たところでどう着地する。
 絞首刑のように宙に吊られた俺には、ただシャナを見ている事しかできなかった。
 そんな俺達の様を見て、嘲笑するフリアグネ。
 もはやこの場に用はないと言わんばかりに、封絶が解かれる。
 それと同時に、あのハンドベルの音が鳴り響いた。
 再び動き出す世界。遠ざかっていくシャナ。その姿を中心に、残っていたフィギュアが一斉に爆発した。
 ビルは砕け、路地は炎で埋まる。
 だが、シャナは動かなかった。
 シャナを飲み込まんばかりに溢れかえる炎。
 それを見ているしか出来ない俺。
 すると、闇に沈んでいくように俺の意識は刈り取られていった。
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