”狩人”フリアグネ編
十二章 「困惑」
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やってみないとね」
さっきまでのと、大して変わらないもの、と一蹴するシャナ。
がっかりした顔するが、すぐ立ち直ったフリアグネは戦闘の開始を告げる。
「さみしい感想だねぇ。それじゃあ、やろうか」
フリアグネが告げたと同時に、三十ほどのフィギュアが襲い掛かってきた。
シャナは、まず彼女の正面にいたナースのフィギュアを両断する。
同時にナースの残骸が爆発。
フリアグネの野郎。俺の時のマネキンは爆発しない仕様だったのに、シャナを相手にするときはキッチリ爆発する仕様にしてやがる。
爆風で俺をやってしまえば余興にはならないってことか。
ここに来て、未だ奴が全体の流れを握っている。
戦術的には俺達が勝っていても、戦略的には奴に分があるって事だ。
何か企んでいてもおかしくない。
俺の時の二種類のマネキンのようにな。
爆散したフィギュアの乱風の中、ゴスロリの懐に飛び込み、シャナは太刀を横に薙ぐ。
完全に、シャナの独壇場だな。
だけど俺としてはこのまま、突っ立ってるのも格好がつかない。
フリアグネを牽制する上でも、俺が第二陣に控えておく必要があるな。
とりあえず、投影をしておくか。
この爆音の中ならシャナにもフリアグネにも気付かれないだろう。
再び背に手を回す。
「投影開始―――」
肯定を省略した夫婦剣が、再び手元に現れる。
うーん、やっぱり酷い出来だな。分かっているとはいえ、あまりにも酷い完成具合についつい嘆息してしまう。
その間もシャナは暴風の様に突撃していた。
いや、端から見ればただ暴風の様だが、その剣技は華麗な舞の様だ。
身の丈に迫る大太刀を小枝の様に軽々と振るい、風の様に留まることなく進み続ける。
その様はひたすらに美しく、圧倒されてしまう。
切り飛ばされ、火花と化しつつあるフィギュアを蹴散らした先には、遂にフリアグネの姿が見えた。
一息でフィギュアの群れを突破したシャナは、逆袈裟に切り上げようと足を踏み切る。
―――捕ったか。
「っふふ……!」
だが、そう思った俺の思いとは裏腹に、フリアグネは相変わらずの薄笑いを浮かべる。
そして、やけに芝居掛かった身振りで宙にコインを打ち上げた。
―――そう、奴はフリアグネ。一癖も二癖もあるくせ者だ。
シャナに油断が有ったかどうかは分からない。だが、少なくとも俺自身は彼女と合流したことで多少、油断してしまっていた。
第二陣に控えていた俺が、警戒してなくてどうする!
打ち上げられたコインは残像を残し、そして金の鎖と化した。
鎖は真上からシャナに迫る。
シャナは攻撃を中断し、座に鎖を迎撃するが、切れるどころか逆に鎖は大太刀の刀身に幾重にも絡み付く。
あの野郎、わざと迎撃させたんだ……。
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